ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、世界の食糧事情に深刻な影響を及ぼしている。ノルウェーの肥料大手ヤラ・インターナショナルの最高経営責任(CEO)、スヴェイン・トーレ・ホルセザー氏は「世界は何百万人に影響を与えかねない食糧供給危機に向かいつつある」と警鐘を鳴らした。
肥料危機経由の「食糧危機」
ロシアとウクライナは合計で世界の小麦輸出の約29%、トウモロコシ輸出の19%、ひまわり油輸出の80%を占める世界有数の穀倉地帯。
ロシアとベラルーシは、農業用肥料に不可欠なカリ塩の主要輸出国でもある。
軍事衝突以来、ウクライナの港では食糧輸出のできない状態が続き、業者も金融制裁を避けるためにロシアやベラルーシからの調達を避けている。
世界の食糧供給システムは、戦争の勃発以前からすでに緊張状態にあった。パンデミックやサプライチェーンの問題、天候の影響などで、食糧価格は10年来の最高水準に達していた。
今回のウクライナ侵攻で、小麦、食用油、トウモロコシだけでなく、原油や天然ガスまで価格が高騰している。肥料の生産に不可欠な天然ガスの高騰で、世界の食料供給の逼迫にさらに拍車をかけることとなった。
世界の食料価格、最大2割上昇も
エジプトは自国の食糧備蓄への懸念から、小麦、穀粉、豆類の輸出を禁止した。
インドネシアは食用油やチョコレートなどの原料として使用されるパーム油の輸出規制を強化した。
先進7カ国(G7)の農相や国際連合食糧農業機関(FAO)は、世界の食料輸出国に対し、輸出を制限しないよう求める声明を出している。
FAOは11日、ロシアのウクライナ侵攻で世界の食料・飼料価格が最大約20%上昇する可能性があるとの見方を示した。
間もなく小麦の植え付けシーズンを迎えるウクライナでは、耕作する農民を確保できるか不明だという。
(翻訳編集・李凌)
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