安倍晋三元首相は14日、安全保障環境の厳しさから日本は防衛費を国内総生産(GDP)比2%に引き上げるべきだと述べた。防衛予算は「次の世代に祖国を残していく予算」と位置づけ、日本の独立を守り抜く決意を予算で示していくべきだと訴えた。
2021年度の防衛費は当初予算と補正予算を合わせてGDP比1.09%、海上保安庁の関連予算を加えても1.24%に留まっている。安倍氏は北大西洋条約機構(NATO)加盟国30カ国の合意であるGDP比2%を例に挙げた。ドイツは防衛費増加に後ろ向きだったが、ロシアのウクライナ侵攻後は2%に向けて防衛力増強の姿勢を示した。
安倍氏は自民党安倍派(清和政策研究会)の会合で、中国や北朝鮮など日本周辺国が軍事力を増強するなか、自衛隊の装備・設備にかかる予算が不足していると指摘。米国などに日本周辺地域への関与を呼びかけても、日本自身が防衛努力を示さなければ無意味であるとし、「予算において国会意志を示していくことが求められている」と述べた。
また、道路や橋梁などのインフラは建設国債が認めれらるいっぽう、防衛予算が「消耗費」と言われるのは「間違っている」と指摘。「防衛予算は次世代に祖国を残していくための予算だ」とし、防衛費に充てる国債発行の必要性を説いた。
安倍氏はこのほか弾薬やミサイル不足、戦闘機や艦船の維持修理、隊舎建て替えの遅れ、サイバー、宇宙、電磁波等の新たな分野の研究に対する安定投資の不足などを挙げて、「日本の防衛上の脆弱性にあたる」と指摘した。利益率の低さから防衛産業からの撤退が起きており、「安心して研究開発投資」する環境の整備が必要だと訴えた。
政府は年内に、国の外交・安全保障政策の基本方針となる「国家安全保障戦略」等の3文書の改定を予定しており、自民党内では防衛費増額を求める声が強くなっている。
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