ヒマラヤから南シナ海へのグレーゾーン作戦を強化する中国

2022/04/15 更新: 2022/04/19

専門家によると、中国は仮想敵国に対して戦略的に優位に立ち、自国の支配力を高めるという主張を押し進めるためにグレーゾーン作戦を長期的に行っている。中国は南シナ海や中国とインドを隔てるヒマラヤ山脈にある実効支配線(LAC)沿いなどで、しばしば領土侵害を伴うものの、戦争行為には至らないような攻撃的な戦術をとっている。

オーストラリアのグリフィス大学(Griffith University)グリフィス・アジア研究所(Griffith Asia Institute)の客員フェローであるピーター・レイトン(Peter Layton)氏は、「グレーゾーン作戦は、相互に関連した一連の行動を通じて、徐々に成功を積み重ねることを目的としている。つまり、本来は綿密に計画された作戦の中で実施されるべきものだ」とFORUMに述べた。

例えば2021年末に南シナ海で中国は、ナトゥナ諸島(Natuna Islands)付近のインドネシアの排他的経済水域(EEZ)内での石油・ガス探査を阻止するために沿岸警備隊の船舶を派遣した。また、2022年3月にはベトナムの排他的経済水域内で海軍の訓練を行ったとレイトン氏は述べた。

一方、ヒマラヤ山脈では、中国が実効支配線に沿って「グレーゾーン作戦を活発化」させ、中国人民解放軍(PLA)の部隊がインドの支配地域の一帯を占拠し始めたため、2020年6月にインド軍との衝突に至った。

レイトン氏は、中国共産党指導部はグレーゾーン作戦がより大きな紛争にエスカレートするのを避けたいと考えていると述べているが、ヒマラヤでの衝突では、約20人のインド軍兵士と45人もの中国軍兵士が死亡した。

レイトン氏は、「6月15日の衝突は、1962年以来、インドとの間で最も激しいものだった。さらに広く見れば、中国のグレーゾーン作戦がさらに進化したと言えるだろう」と述べた。

レイトン氏によると、中国は南シナ海の九段線など、国際的に認められていない領域にある領土に対する法的主張によって自らの行動を正当化しようとしている。

レイトン氏は、「中国は他のどの国とも合意していない、または認められていない法律を作り、それを他の独立国に強制しようとしている」と述べた。

資源が豊富な南シナ海で中国は、商業漁船、武装した海上民兵、漁業巡視船、海警艦艇および中国人民解放軍の海軍艦艇を組み合わせて、グレーゾーン作戦を実行する多層的な「キャベツ戦略」を採用している。

レイトン氏は、「グレーゾーン作戦は戦術指揮官が自由に実施しているものではない。実際、中国人民解放軍が提供し、中国共産党が行使する強力な軍事力に彼らは依存している。中国人民解放軍がいなければ、中国のグレーゾーン作戦はまるっきり違うものになり、効果もかなり低くなっていただろう」と述べた。

レイトン氏は、長期的な乖離戦略はこのような戦術に対する最良の対応であると述べた。つまり、中国のやり方は高くつくことを理解し、キャベツの層を選択的かつ繰り返し剥がしていくことで、コストが見合わないまで高くできる。

インドネシアは、ナチュナ諸島周辺での中国艦艇の侵入に対して艦艇を派遣して対峙する形で対応し、2022年1月には他の南シナ海諸国を招待し、中国の侵略に対する共同対応を協議することで合意した。

レイトン氏は、「最も現実的な方法は、対処可能な脆弱性を突いて、最低限の利益を求めることだ。個々の不満が積み重なると、グレーゾーン作戦が中国の国家戦略にとって魅力的で有用な選択肢でなくなる可能性がある」と結論付けた。

Indo-Pacific Defence Forum