外務省は22日、日本外交の基本方針をまとめた青書を発表した。中国の人権状況に触れ「しっかりと声を上げていく」と態度表明した。青書では日本の人権外交について特別枠を設け、特に中国関連課題を強調。香港や新疆ウイグル自治区などの人権状況を10月の日中首脳電話会談で岸田首相から習近平主席に直接指摘したことや、国連人権理事会における同問題への深刻な懸念表明などを並べた。
人権問題について、政府は、「基本的人権は中国を含めいかなる国においても保障されることが重要であり、引き続き国際社会が緊密に連携して中国側に働きかけていく」ことが重要とした。
林外相は巻頭言で、「世界は米中競争、国家間競争の時代に本格的に突入し、パワーバランスの変化が加速化・複雑化し、これまで国際社会の平和と繁栄を支えてきた自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的な価値や国際秩序が厳しい情勢にさらされている」と指摘。ロシアによるウクライナ侵略は「国際秩序の根幹を揺るがす暴挙」として厳しく非難すると記した。
国際情勢においては中国、ロシア、北朝鮮について特筆した。ロシアは「冷戦後の勢力圏を取り戻すべく周辺国の領土の一体性を起草する動きを積み重ねている」と述べた。
中国については、「国防費を継続的に増大させ軍事力を広範囲かつ急速に強化・近代化しており宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域における優勢の確保を目指している」とし、「既存の国際秩序と相容れない独自の主張に基づき、東シナ海、南シナ海などの街区域では、力を背景とした一方的な現場変更の試みを継続するとともに、軍事活動を拡大、活発化させており、日本を含む地域と国際社会の安全保障上の強い懸念材料となっている」と指摘した。
北朝鮮については「国連安保理決議に従ったすべての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの完全な、検証可能な、不可逆的な廃棄を依然として行っていない」とし、北朝鮮の行動は「日本地域及び国際社会の平和と安全を脅かすものであり断じて容認できない」と非難した。
こうした周辺諸国のリスクのほか、デジタル社会における技術革新は軍民両用技術として軍事力を強化する動きにつながっていること、サプライチェーンの拡大・細密化にともない経済依存関係を利用した威圧のリスクが高まっていることなどを挙げた。さらには、SNSなどによる過激思想の拡散やテロ資金の獲得のほか、偽情報が選挙に影響したり「国民の正常な意思決定を阻害する」可能性があるとして対策の必要性を説いた。
青書は台湾についても項目を設け「台湾は、日本にとって自由、民主主義、基
本的人権、法の支配といった基本的価値を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人」と明記した。
日本外交の展望として、人類が過去1世紀で築きあげてきた国際秩序が、ロシアの暴挙により根幹が揺るがされ、世界も日本も戦後最大の危機を迎えるとした。今後の国際秩序の趨勢は日本を含む国際社会の選択と行動が決定すると述べた。また、自身の防衛力の抜本的な強化も必要で、安全保障戦略文書、防衛大綱、中期防衛力整備計画の改定が重要だとした。
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