農林水産省は9日、政府が輸入し国内の製粉業者に販売する小麦の価格を4月1日から17.3%引き上げると発表した。米国やカナダの不作や、ウクライナ情勢に対する懸念などが国際価格を押し上げた。小麦の先物価格も14年ぶりに最高値を更新した。同省は情勢を不安視する声に対応すべく、専用の相談窓口を設置した。
政府発表によると、輸入小麦の価格は1トンあたり7万2530円となり、2008年10月の7万6030円に次ぐ過去2番目の高値を記録した。昨年夏の高温・乾燥による米国やカナダ産小麦の不作、ロシアの輸出規制、ウクライナ情勢等の供給懸念により小麦の国際価格が上昇、価格を一段と押し上げる要因となった。
穀物の先物取引で影響力の大きいシカゴ商品取引所(CBOT)では、ウクライナ侵攻を受けて小麦先物の相場が急騰。8日の取引では1ブッシェル(約27キロ)13.635ドルをつけ、14年ぶりに最高値(2008年2月の13.495ドル)を更新した。なお、その後の取引では一転して値幅制限の下限まで下落した。
ロシアは世界最大の小麦輸出国であり、小麦の国際輸出の18%以上を占めている。ウクライナと合わせれば世界輸出総量の3割を占める。日本は両国から小麦を輸入していないが先行きの不透明感が高まり世界の供給量の減少が警戒されている。
松野博一官房長官は9日午後の会見で、ウクライナ危機は日本の安全保障に関わる問題だとし、対ロシア制裁で暮らしや企業活動に影響が出ることに理解を求めた。
大半を輸入に依存する肥料原料の供給も問題となっている。農林水産省がまとめた「令和2年度食料・農業・農村白書」によると、日本で使用されている化学肥料の大半は、原料を輸入し国内で製造されている。主な原料であるりん鉱石と塩化カリは全量を輸入に依存している。
塩化カリの輸入量は約43万7000トンでカナダが62.7%を占めているが、ベラルーシが13.3%、ロシアが12.2%と合計25%に上る。農業協同組合新聞は4日付の記事で「塩化カリはこの両国から調達はできなくなると見られカナダからの輸入を増やすことが検討されているが、価格上昇は一層懸念される」と報道している。
ロシアやウクライナとの貿易など、日本の農林水産業や食料供給への影響を不安視する声が高まってきていることを受けて、金子農林水産大臣は8日、「ウクライナ情勢に関する相談窓口」を設置すると発表した。専用サイトを開設し、燃油高騰対策や中小事業者向けの資金繰りの支援などの情報発信を強化するという。
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