中国北京市に拠点を置き海外に向けて中国の政治などを発信するニュースサイト「多維新聞」は26日、運営を停止すると発表した。専門家は以前、同サイトは中国共産党指導部の権力闘争に関与していると指摘したことがある。
多維新聞は26日に同サイトで声明を掲載し、「内部報道業務の調整のため」同日午後4時以降サイトと関連アプリの運営を停止すると説明した。
香港紙・星島日報電子版によると、多維新聞の北京本社在職の社員数は50~60人で、大半は退職したとみられ、残った社員は香港ニュースサイト「香港01」に編入された。
多維新聞は1999年、米国ニューヨークで中国人民主化活動家の何頻氏が創設した。2009年、香港の実業家である于品海氏が同サイトを買収した後、拠点をニューヨークから北京に移した。香港と台湾の台北市にも編集部を設立した。
于品海氏が会長を務める上場企業、南海控股有限公司は多維新聞の親会社にあたる。「香港01」も南海控股傘下のメディア企業である。
米ラジオ・フリー・アジア(RFA)は、于氏の中国本土での投資事業が失敗し巨額の損失を被ったことが原因で、多維新聞が運営停止に追い込まれたと報じた。
多維新聞の拠点が北京市に移転した後、報道方針が親中になり「共産党の海外宣伝メディア」と呼ばれるようになった。
在米中国人経済学者の何清漣氏は、著書『紅色浸透(邦訳:中国の大プロパガンダ:恐るべき「大外宣」の実態』の中で、「多維網にはある特徴がある。それは共産党内部で闘争が激しくなり何らかの対立が起きた時、裏情報をリークしてデマを打ち消すという役割を担うことだ」との見解を示した。
何氏は、多維新聞は中国の元最高指導者、江沢民らの代弁者であると指摘。
15年1月、同サイトは評論記事で、江沢民氏は「今、生涯で最も厳しい政治的嵐に直面している」とし、習近平政権の反腐敗キャンペーンで失脚した高官は「江沢民派のメンバー」と批判した。18年3月の記事では、習近平氏は「もう一人の毛沢東になろうとしている」と批判した。
一方、多維新聞は昨年7月の中国共産党設立100周年を祝う特集記事と、今年1月の『鄧小平南巡30周年』シリーズで、江沢民元国家主席の政治的「過ち」を列挙し、また江氏が鄧小平の改革開放路線を否定し、鄧の政治的対立側にいたなどと非難した。
何清漣氏は1月25日、大紀元への寄稿で、従来江沢民氏を擁護してきた多維新聞が同氏を公に非難し始めたという変化は、現政権の党内江沢民派を清算するシグナルであるとした。
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