国境なき記者団(RSF)は、5月に予定されている中国訪問で同国における報道の自由の悲惨な現状を取り上げるようバチェレ国連人権高等弁務官に求めた。国外にも輸出される言論統制は「世界の民主主義にとって大きな脅威」だと警鐘を鳴らした。
RSFは27日発表の書簡のなかで、中国共産党が「情報統制や市民へのオンライン検閲・監視に基づく社会モデルを押し付けている」と指摘。その手法は国境を超えて浸透し「ジャーナリストが国家のプロパガンダの手先にすぎないという『新しい世界メディア秩序』を確立しようとしている」と述べた。
こうしたジャーナリズムと情報の自由に対する弾圧を阻止し、拘束されたすべてのジャーナリストの解放を実現するためにも、必要なすべての措置を講じるようバチェレ氏に訴えた。RSFのクリストフ・ドロワール事務局長は「情報の自由は人権保護の礎であり、この待望のミッションにおいて優先的に扱われるべき」と主張した。
現在中国では、中共ウイルス(新型コロナ)の国内感染状況を報じた張展氏ら124人のジャーナリストが拘束されており、その多くは生命の危機にある。大紀元にコロナ感染拡大の情報を提供した中国人市民11人も拘束されている。
中国サイバースペース管理局(CAC)は、中国の13億人のネットユーザーがアクセスできる情報をコントロールすることを目的とした幅広い施策を展開している。また、20年に施行された香港国家安全維持法のもと、香港当局は独立メディアやジャーナリストへの締め付けを強化。報道の自由の危機が深まっている。
書簡は海外における中国共産党の浸透工作にも言及した。中国と100カ国以上を結ぶ広域経済圏構想「一帯一路」において、中国国営メディアが運営する複数のメディアネットワークを設立し、ジャーナリスト向け研修会などを通じて中国共産党のプロパガンダを国際的に普及させようとしていると指摘した。
国境なき記者団の2021年度「世界報道自由度ランキング」で中国は180か国中177位だった。
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