英国政府が5月25日、安保上の懸念から中国企業による英半導体最大手、ニューポート・ウェハー・ファブ(以下、NWF)の買収案への審査を開始すると発表した。背後に買収を問題視する米国の働きかけがあったという。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)3日付は、英国が調査に乗り出したことで、買収が撤回される可能性が浮上していると指摘した。
NWFは昨年7月、中国電子機器大手、ウィングテック(聞泰科技)のオランダ子会社によって買収された。
記事は情報筋の話として、「同工場を取り戻せば、英国が電気自動車(EV)に欠かせない半導体製造の一大拠点になれるかもしれない」と在ロンドン米国大使館の外交官が数週間前から英当局者を説得したと伝えた。
外交官は英高官に買収の撤回は求めなかったが、それが米国の望みであることは明白だったという。
英議会で昨年成立した「国家安全保障・投資法」は、国家安全保障に関わる17分野での外国企業による合併・買収について政府への届け出を義務付けた。今回の買収への審査は同法成立後、初の調査となる。
ウィングテックは中国政府とのつながりを指摘されている。中国の企業情報に特化した調査会社Datennaによると、中国国務院国有資産監督管理委員会が同社の約3割の株を保有している。江蘇省無錫市政府と雲南省昆明市政府傘下の投資会社はそれぞれ、同社9.76%と5.67%の株を保有している。
電子機器メーカーである同社は近年、半導体など電子デバイスを強化している。
NWFは、自動車などに使われる直径200ミリメートルのウエハーで月3万5000枚超の生産能力を持つという。中国側の買収案は、工場と約500人の技術者を全て引き取る計画だった。
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