中国が「国内事項または国内関心事」とする事案が、他国に悪影響を及ぼし、地域社会に混乱を生じさせている。
中国が自国の国民と国際資産のみに影響を及ぼすと主張する行動により、オーストラリア、カナダ、台湾、米国といった国々で、その影響力を海外に拡大しようとする中国共産党に関する逮捕、制裁、捜査が進展している。
例えば、台湾で育った米国市民で、2022年5月にカリフォルニア州の主に高齢の台湾教区民の教会で1人を殺害し、5人を負傷させた罪に問われているデービッド・チョウ(David Chou)は、米国国務省によると、中国共産党の統一戦線工作部と繋がりを持つ、台湾独立に反対する団体と密接な関係にある。この団体は、プロパガンダを広め、中国の政策に反対する人々への強要や糾弾のために、海外の組織に資金を提供し、支援している。
「統一戦線は、新疆ウイグル自治区、チベット、および中国の他の地域で起こっているひどい人権侵害に反対する少数民族や宗教的少数派を含む、学界、企業、市民団体、および中国人亡命者コミュニティのメンバーを頻繁に脅迫している。米国国務省は2020年12月のニュースリリースで、「中国共産党の利益に反する働きをしていると見なされる個人を対象とする強制戦術」だと述べた。「これらの悪質な活動は、中国共産党の権威主義的な言説と政策的選好を推進するために、米国をはじめとする国々で、準国家的な指導者、海外の中国人コミュニティ、学界、およびその他の市民社会グループを選び、強制することを意図している」
AP通信が報じたところでは、チョウは政治的憎悪から行動し、「その部屋にいるできるだけ多くの人を冷酷に処刑したかった」という。
オレンジ郡のトッド・スピッツァー(Todd Spitzer)地方検事は、「現在、これが憎悪によって動機づけられているという非常に強力な証拠はあるが、本件ではさらにその理論を裏付けるすべての証拠をまとめておきたいと考えている」と述べ、憎悪犯罪を実行するために「待ち伏せ」していたという罪で有罪判決を受けた場合、チャウは無期懲役または死刑になる可能性があると付け加えた。
ここ数週間で米国当局から犯罪容疑で告発された中国共産党関係者はチョウだけでなない。米国司法省は5月、中国の反体制派、人権指導者、米国在住の親民主派活動家に対するスパイ活動容疑で米国市民1人と中国情報担当者4人を起訴したと発表した。裁判所文書によると、ニューヨーク州クイーンズ区のワン・シュジュン(Wang Shujun)、広東省のフェン・ヒー(Feng He(Boss He))、青島省のジー・ジ(Jie Ji)、広東省のミン・リー(Ming Li(Elder Tang))とリトル・リー(Little Li)、青島省のキーキン・ルー(Keqing Lu(Boss Lu))が米国内外でのスパイ活動と国際的な弾圧計画に参加したとされる容疑で起訴された。
司法省のニュースリリースによると、ニューヨーク州東部地区の弁護士、ブレオン・ピース(Breon Peace)氏は、「申し立てによると、ワンは自らのコミュニティで密かに諜報資産として機能し、中国政府の国家安全部のメンバーである共犯者らに著名な民主主義を支持する活動家や組織に関する機密情報をスパイし、報告していた」と述べている。「今日の起訴は、米国に居住する新民主主義的な中国人の信念と言論を理由に、彼らの安全と自由を脅かす中華人民共和国の作戦を暴露し、妨害するものだ」
FBI国家安全保障局(National Security Branch)のアラン・E・コーラー・ジュニア(Alan E. Kohler Jr .)次官代理は、中国政府が批判者を沈黙させようとしている姿勢に関して何らかの疑問を抱く者があれば、「今回の事件によって一切の疑念が払しょくされるだろう」と述べた。
コーラー氏は「中国政府の攻撃的な戦術はかつて自国内に限定されていた」とした上で、「現在、中国は米国をはじめ世界中の人々をターゲットにしている」と語った。
米国と同様に、カナダでも中国共産党に代わり悪意を持って行動する組織や個人に対する対応が増加している。
「反体制派は安全ではない。職場にも、自宅にも、市民社会にも、カナダ国内にも安全はない」とカナダを拠点に香港の民主化運動を支援するための政治活動をロビー活動しているアライアンス・カナダ・ホンコン(ACHK)のシェリー・ウォン(Cherie Wong)事務局長は、カナダ議会のカナダ・中国関係に関する特別委員会でこう証言した。「企業、非営利団体、学界、政治家、メディア、および既得権益を持つその他の機関が中国政府を怒らせることを恐れる限り、脅迫、検閲、脅迫は続くだろう。中国は独裁主義を効果的に海外に輸出している」
ウォン氏は、彼女自身も中国共産党の脅迫を受けたことがあると述べた。
カナダの他の地域では、オンタリオ州ハミルトンのマックマスター大学(McMaster University)の中国人留学生学友会(Chinese Students and Scholars Association)が、中国の人権侵害に関する講演会を妨害した、と『ザ・エポック・タイムズ(The Epoch Times)紙が報じている。イベントで講演したウイグル研究所(Uyghur Research Institute)の研究責任者のルキア・トールダッシュ(Rukiye Turdush)氏は、後に妨害者が中国人学生であることを突き止め、カナダの中国領事館から指示を受けていたことを示すWeChatの会話のスクリーンショットを入手した。
「彼らは非常に緊密に連絡を取り合い、すべてを中国大使館に報告し、中国大使館は彼らに事前に多くのことを指示した」とトールダッシュ氏は『エポック・タイムズ』紙に語った。「これは組織化された愛国的な中国人学生ではない。この事件には中国大使館の手がかかっている」
戦略国際問題研究所(CSIS)によると、中国が影響力を拡大しようとしている中、「オーストラリアほど過去数年間にわたり中国の影響力の増大と政治的野心に政治的に揺さぶられている国はおそらく存在しない」
戦略国際問題研究所によると、オーストラリアには中国系オーストラリア人のコミュニティが広がっており、統一戦線工作部のターゲットとなっている。
「中国共産党と統一戦線工作部は、何十年にもわたってこうしたオーストラリアの中国系コミュニティの中で中国との緊密な絆を深めてきた」という。「彼らは、中国系コミュニティの組織を選び、中国政府に共感を持つ人々が地元で注目されるよう支援ネットワークを提供すると同時に、中国語報道での否定的なメディア報道を除去し、批判者を抑え込むことでこれを実現してきた」
オーストラリア政府関係者は、中国は非公式のチャンネルを使用して公開討論に影響を与え、政治システムを操作していると述べている。戦略国際問題研究所によると、中国はさまざまな問題に関する親中姿勢と引き換えに政治家に金銭的な貢献を行い、中国系オーストラリア人有権者を動員して中国政府の指針を支持しない政党を迫害し、地元メディアに親中的ストーリーを植え付け、「批判者を抑え込み、黙らせるためのさまざまな努力」を行っている。
戦略国際問題研究所はさらに、「こうした努力は、世論の目から隠れるよう工夫されている」とした上で、「多くの場合、問題の干渉の度合いと範囲を正確に絞り込むことをより困難にする、もっともらしい否定可能性の層を作るために、代理を通じて間接的に手配されている」と述べた。
中国共産党中央委員会の習近平総書記が述べたように、統一戦線工作部が「魔法の兵器」であるならば、透明性と法の支配は民主主義国が中国の戦術に対抗するための武器である、と戦略国際問題研究所は断定している。
同研究所は「中国の影響力を作動させる勧誘、脅迫、包摂、自己検閲といった闇に光を当てることは、最初のステップであり、非常に重要なステップである」とした上で、「民主政府は法律を強化する必要もでてくる可能性がある。同時に、民主社会は規範を強化して、贈収賄、汚職、および包摂の範囲を狭める必要がある」と述べた。
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