イタリアメディアによると、バチカン(ローマ教皇庁)は香港にある事務所を北京に移転すると計画している。バチカンは今まで中華民国(台湾)を中国を代表する唯一の国家と認定しているため、バチカンと台湾の外交関係にどう影響を与えるかが注目されている。
地元紙イル・メッサジェッロ(Il Messaggero)の報道では、バチカンの国務長官であるピエトロ・パロリン枢機卿が同紙の取材に対し、数年前から香港事務所を北京に移転することを計画していたと明言した。現在、中国政府の返答を待っているところだという。
バチカンは視察団(Study Mission)の名目で香港に非公式の代表事務所を構える。
ハビエル・エレーラ・コロナ(Javier Herrera Corona)前代表が今年離任した後、バチカンは7月にホセ・ルイス・ディアス・マリブランカ・サンチェス(José Luis Diaz Mariblanca Sanchez)氏を駐香港代表に任命した。
ロイター通信によれば、中国政府が香港への支配を強める中、コロナ前代表は離任前に香港のカトリック教会聖職者らと4回にわたり会談し、香港での信仰の自由が脅かされていると警告した。同氏は、中国政府による宗教団体への抑圧は将来香港でも見られる可能性があると述べ、各教会に「資金や財産、重要文書を守るよう」求めた。
同報道では、コロナ前代表らは友好国の協力の下で、一部の重要文書を香港から移送した。
米メディア「カトリック・ニュース・エージェンシー」は、バチカンが香港事務所を北京に移転する計画について、「1951年にバチカンが中華人民共和国との国交を断った後、初めて中国と外交関係を結ぶことを意味する」との見方を示した。
バチカンは欧州諸国の中で唯一、台湾と外交関係を維持している国だ。
いっぽう、台湾台北市にあるバチカンの駐中華民国大使館が閉鎖、または「代表処」に格下げされるかとの質問に対して、パロリン国務長官は「今は現状維持」と答えた。
台湾・淡江大学の張家麟教授は米ラジオ・フリー・アジア(RFA)に対し、バチカンは中国政府との関係を強化したい狙いがあると話した。「中国政府が北京にバチカンの事務所を設置することに同意し、両国関係がより緊密になれば、バチカン・台湾の外交関係も大きな影響を受け、悪化する可能性がある」
欧米メディアによると、バチカンは今月初め中国に訪問団を派遣し、司教任命権を巡る中国との暫定合意を再延長する方針を示している。
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