「まだその時ではありませんよ」
バイク事故で生死を彷徨うなか、亡き祖母の声を聞いたジェシ・ストラチャムさんは、不慮の事故を経験しながらも人生の意味に気づくことができたと、当時を振り返ります。
「私はとても自己中心的で、信仰もなく無神論者でした。今の私は全くの別人です。人を助けることや、気遣うことを優先するようになり、それが一番の喜びとなりました」
「私にとっては信仰が全てです。追い求めるのではなく、既に持っているものすべてに感謝の念を抱くのです。神様から与えられた役割を実行し、正しい道を歩んでいます」
現在車椅子生活をおくりながら歯科助手として働くストラチャムさんは、フィットネスアプリと自身の財団「Wheel with Me Foundation」を通じて、同じような境遇にある人々を支援する活動を行なっています。
生死を彷徨うなかでの不思議な体験
事故の前日である2015年1月17日、ストラチャムさんは友人の祖母の葬儀に参列していました。
「牧師が話しているとき、穏やかな気持ちに包まれました。とても暖かくすべてを包容してくれているような感覚でした…まさか次の日にこのような感覚を経験することになるとは思いもしませんでした」
1月18日、ストラチャムさんは友人のバイクの後ろに乗って帰宅していた際、Uターンを試みようと割り込んできたSUVと衝突しました。
「友人は足を骨折しました。私は衝突により、車の上へ乗り上げ、背中2カ所を骨折しました。その衝撃で肋骨が肺と脊髄に突き刺さりました」
病院に運ばれたストラチャムさんには救急蘇生処置が2回施されました。その中で彼女は不思議な体験をしました。
「私は祖母に会いました」とストラチャムさん。「ジェシ・メイ、まだその時ではありません。あなたにはまだやるべきことがあり、帰りを待っている人がいるのよ」
昏睡状態から覚めたストラチャムさんは、体験したことを母親に話しました。祖母はストラチャムさんが幼い頃に亡くなっていましたが、「ジェシ・メイ」という幼い頃のあだ名を口にしたと聞き、母親はその体験が本物であると確信したと言います。
信仰を見つける
ストラチャムさんは子供の頃、神様を信じていました。しかし、大人になるにつれて信仰を失っていました。
「私は無神論者となり信仰はありませんでした。しかし事故の後、私は主のもとに連れ戻され、救われ、生きる目的を与えられました。この事故が起こるまで、神様や信仰は私にとって大切なものではありませんでした」
長く辛いリハビリ生活の末、徐々に回復していったストラチャムさん。事故から1年3カ月後に、自身を蘇生する現場にいた看護師と再会しました。
「その看護師は私が未だに生きていることが信じられないようでした」。「私の命は消えかけていました。もしかしたら神様は、私の命がまだ終わりではなく、まだやるべきことがあるのだと悟らせてくれたのかもしれません」
「私たちは、悪いことばかりに目を向けがちです。しかし、この事故を経験したことで、乗り越えてきたことや、どれだけ人生が良い方向へ変わったかに目を向けたとき、前進することができました」
体が以前のように自由に動かないなかでも、彼女はチャレンジ精神を持ち続けました。大切な人たちに支えられながら、野外障害物競走イベント「タフマダー」に3年連続で参加したといいます。
「私の3回目のタフマダーは、目標マイル数を達成することができたので、特別なものとなりました」。「忍耐力や精神力が向上しました…諦めない心が育まれるのは本当に素晴らしいことです」
彼女は現在も神経痛や筋骨格系の痛み、失禁に悩まされています。それらを克服するための戦いが、彼女の第二の挑戦となっています。
「30歳になると、友達は続々と結婚し家庭を築いています。それが出来ないことが現在、私にとっての最大の苦しみの一つです」と彼女は言います。「しかし、このケガは私にとってポジティブなものでもありました。私は精神的にも、経済的にも、キャリア的にも、肉体以外のあらゆる面で以前よりずっと良くなっているからです」
「神様は私にたくさんの使命と力を与えてくれました。こうして生きていられることに感謝しています」
信仰を行動に移す
現在、ストラチャムさんは、信仰が自分のエネルギーになっていると言います。
「以前は、物質的なものを大切にしていました。現在、私は人間との付き合いや交流を大切にしています。そして毎日に感謝することも学びました。一番大きな喜びは、人を助け、人を優先に考えるようになった事です。無私の心でいることに、最もやりがいを感じます」
そして、人の可能性を最大限に発揮できるようサポートすることが、彼女の信念となっていると語ります。
「そのためにどれだけ努力したかが重要です」。「本当につらいことがあっても、幸せになる方法を他の人たちに教える手助けができれば、本当に幸せです」
(翻訳編集・徳山忠之助)
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