[東京 28日 ロイター] – 財務相の諮問機関である財政制度等審議会は28日、日本を取り巻く厳しい安全保障環境を踏まえ、増税を含む安定財源を確保した上での防衛力増強が必要な点で一致した。既存戦力の効率的な配置についても議論した。財政制度分科会の増田寛也会長代理(日本郵政社長)が会合後に明らかにした。
分科会では神保謙・慶大教授と河野克俊・前統合幕僚長(三菱重工業株式会社顧問)が、講演を行ったうえで質疑応答に応じ、委員が議論した。
委員からは「借金が増えると国全体が脆弱になるのは明白で、経済成長を含む財政が健全であるべき」、「国債は60年償還ルールがあるが防衛装備品は60年も持たないので財源を確保したうえでの防衛の確保が重要」などの意見が相次ぎ、防衛力増強の財源を国債で賄えばよいとの意見は「なかった」(増田氏)という。
増税をめぐっては「法人税の議論があるが、企業は賃上げも求められているなか対応が難しい」などの意見もあったという。
河野・前統合幕僚長からは、「日本が海洋国家であるのを踏まえ、重点を置いて減らすべきは減らし、今は台湾危機を想定した戦い方を前提に整理している」との発言があったという。ただし具体的に既存戦力の削減の議論はなかったという。
一方、財務省側からは、⽣産年齢⼈⼝の減少や⺠間事業者に厳しい採⽤状況が続いている実態を踏まえ、⾃衛隊の実質的な⼈員増ありきではなく、真に必要な⼈員と防衛態勢の在り⽅について根本から検討し直すべきとの提言も出たという。
日本の防衛力強化で最も喫緊の課題について増田氏が質問したところ、神保氏は相手にコストをかけさせるための継戦能力、河野氏は抑止力としての攻撃力を挙げたという。
政府は年末までに外交・安全保障政策の長期指針「国家安全保障戦略」など防衛3文書の改定を進めており、3文書をめぐっては自公間で規模、財源、敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有など多数論点があり、官邸の有識者会議、自公の実務者協議などが並行して実施されている。
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