中国共産党(中共)はおよそ3年にわたって、感染を徹底的に封じ込める「ゼロコロナ」政策を貫いてきた。市民の犠牲や経済状況の悪化を鑑み、「ウィズコロナ」政策へと転換したが、今度は感染拡大や社会全体の混乱を招いている。著名な法学者で民主政治活動家の袁紅氷氏は、コロナ政策転換の原因、および江沢民の死去と評価をめぐる党内闘争を語った。
ゼロコロナ転換の2大原因
袁紅氷氏は大紀元の取材に対し、近頃ゼロコロナ政策の転換に関して、中国共産党指導部の李強氏が習近平主席に宛てた親書の内容を入手したことを明らかにした。
李強氏は親書で、2023年にWHO(世界保健機関)が新型コロナウイルスを一般的な感染症に格下げするとの見通しを伝えている。中国が国際社会から孤立し、笑いものにされるのを避けるためにも、必ずWHOの方針転換前にゼロコロナ政策をやめなければならない、と綴った。
また、地方政府の財政破綻が危惧されるほど、中国経済が壊滅的な状態に陥っていることも指摘していた。袁紅氷氏は、「中共は通貨を大量発行することでこの危機を乗り越えようとしているが、このやり方は悪性インフレーションを引き起こしかねない」と述べた。
中国政府は12日、今年のさらなる経済不況と財政悪化に対応するため、追加で7500億元の国債を発行している。
袁紅氷氏によれば、中国共産党は、習近平氏のゼロコロナ政策を放棄したと大々的に宣言するのではなく、ロックダウンを行わないなどの実質的な緩和政策をとるという。しかしこれでは、中国全土における急激な感染拡大を招き、さらなる社会混乱や多くの犠牲を引き起こしかねないと語る。
「冷酷で人道に反する、まるで人々を強制収容所に監禁するかのようなコロナ対策から一転、急激な制限緩和に切り替える、という極端なやり方から、その無責任さが見て取れる。権力に溺れ、国や国民には無関心な官僚たちに国を統治する能力はない」
緩和後の混乱はすでに起きている模様だ。中国当局は死者数「ゼロ」を発表しているが、オンラインに出回る動画では、火葬場の多忙な様子が映されている。米研究機関は先日、感染拡大に伴う死者は最終的に100万人との推計を示した。
江沢民死去の裏で権力闘争
「白紙革命」が最高潮に達した先月30日、突如、江沢民元総書記の死去が発表された。その後、中国全土は週間の追悼ムードに入った。
6日、北京の人民大会堂で江氏の追悼大会が開かれ、習近平主席は称賛の言葉で江氏を追悼した。
袁紅氷氏は、中国共産党内のリーク情報によれば、習氏の追悼演説はそのほとんどが江沢民派の曽慶紅氏によって事前に準備された言葉だったことを明らかにした。
曽慶紅氏の要求通りに追悼大会を開催しないのならば「江家は親しい関係者のみで追悼を行うこととする。党は関与しないでほしい」といった要求だったという。このような圧力の下で、習氏は江沢民派に妥協したという。
腐敗一掃を口実に
また、中央宣伝部長の李書磊氏は習氏に対して次のような提案を行なっていた。江沢民が死去した今、江沢民派の要求通りに江氏の生前評価を行うことは問題ではない。また、江沢民派、および彼らと関係を持つ企業家などを排除するための準備を速やかに進めるべきだ、といったものだった。
「来年3月に開かれる全人代(全国人民代表大会)および中国人民政治協商会議(全国政協)で習氏は必ず、腐敗一掃を口実に江沢民派をことごとく失脚させるつもりだ」
江沢民派から没収した資産は主に、台湾侵攻作戦計画、国内の治安維持、経済不況にあえぐ中央・地方財政に回ると袁紅氷氏はみている。
江沢民派は、江沢民氏の死をきっかけに習氏に対して反抗キャンペーンを打ち出すつもりだった。しかし、江氏の追悼をめぐって習氏が予想外にも大きく譲歩し、彼らの要求に沿った江氏の生前評価が行われた。これにより、江沢民派の反抗は習氏によって抑え込まれたという。
(翻訳編集・王天雨)
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