米国では、中国動画投稿アプリTikTok(ティックトック)に対する批判が議員や州政府から高まっている。マイク・ギャラガー下院議員は1日放送の米NBCの番組で、TikTokは中国政府が提供する依存度の高い「デジタル薬物(フェンタニル)」だと表現した。
ギャラガー氏はTikTokについて「非常に中毒性が高く、破壊的だ。継続的な利用は特に若い男女に悪影響を及ぼすとの懸念すべきデータがある」と述べた。
アプリはかねて青少年に不適切な動画を配信し、情報管理体制が不足しているとして批判されている。薬物や侮辱、不適切な性的コンテンツを配信しているとしてインディアナ州は運営会社の北京字節跳動科技(バイトダンス)を提訴した。
ギャラガー氏はさらに、バイトダンスが中国共産党の支配下にあることにも言及し、米国のデータセキュリティに対する脅威だと懸念を示した。
安全保障上の観点から、ホワイトハウスや国防総省、国土安全保障省、国務省など多くの連邦政府機関はすでに政府端末でTikTokを利用することを禁じている。このほか、50州のうち約19州でも政府が管理するコンピューターで部分あるいは全面的に利用が禁止されている。
ギャラガー氏は、中国共産党がTikTokの配信する情報を操作しているならば、米国にとって非常に有害だと述べた。この危険性は例えば、米ソ冷戦のピーク時期にKGBやソ連官製紙がニューヨークタイムズなど米主要紙を買収したかのようなものだと訴えた。
統計会社スタティスタによれば、21年には米国で約8690万のアクティブユーザーを抱え、24年にはユーザー数1億に達するとされる。米国人の平均利用時間は50分程度と試算される。
「中国共産党の支配下にある企業が米国で最も強力なメディアになることを容認すべきかどうか、問う必要がある」と語気を強めた。
ギャラガー氏はオーストラリア戦略政策研究所(ASPI)による2019年の報告書を引用して、TikTokは中国政府が定めた政治的敏感な内容を検閲していると語った。同報告書によればTikTokは香港や台湾、チベット、ウイグル、法輪功などに関する内容を制限していることが明らかになった。
このほか、ゼロコロナ政策に反対する昨冬の大規模デモに関する情報を中国当局が検閲・封鎖していたことに触れ、技術を統制に活用する「デジタル全体主義支配」だと例えた。また、国内にとどまらず共産党が世界に輸出しているモデルだとも指摘した。
ギャラガー氏は、下院で今月始まる議会に新設される、中国問題に対処する超党派「中国特別委員会」委員長に指名されている。元海兵隊情報将校で対中硬派として知られ、声明で「米国の最大の脅威は中国共産党だ」と主張している。
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