監視カメラ大手の杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)は中国の警察に「アラーム」を送り、国内のデモ隊や法輪功学習者を追跡して、中国共産党政権の弾圧に協力していることがわかった。監視カメラ情報会社IPVMが報告書のなかで指摘した。
同社のアラームは人工知能によって人の外見や活動の特徴を番号別に振り分けて、「違法性」を認定すると番号が通報される仕組み。例えば、ゼロコロナ政策抗議デモなどは「大衆を集め公共秩序を乱す」(503番)や「不法集会、行進、デモ」(508番)に相当し、リアルタイムのマッピングに合わせて発生場所も番号とともに警察に知らされる。
12月29日発表のIPVM報告によれば、監視リストには「宗教」(716番)や「法輪功」(813番)も入っていたが、1月6日現在、この番号はリストから抜け落ちている。
法輪功は中国の伝統的な修煉法だ。心身の健康と道徳性の向上に顕著な効果が見られるとして圧倒的な人気を博したが、これを脅威とみなした当時の中国国家主席・江沢民が1999年7月20日に弾圧政策を実施。それ以来、学習者は拷問や臓器収奪などの人権侵害を受けている。
大量の個人情報を登録し警察署に通報
ハイクビジョンの「Infovision IoT」は、データの「集約・蓄積・処理」に特化したクラウドプラットフォームで、主に中国政府が認めないグループや抗議活動に対する「取り締まり」の役割を果たしている。
技術資料では、同社の顧客が追跡できる膨大な量の個人データも紹介されている。政治的信条、宗教、民族などの個人的特徴や、毛色、年齢層、笑顔の有無、髪の長短、眼鏡の有無など、さまざまな個人情報が「人物辞書」に登録されているという。
今回の調査結果は、中国全土でゼロコロナ政策に対する大規模な抗議デモが発生してから1カ月後に発表された。
IPVM所属の研究者チャールズ・ロレ氏は「集会の自由と信教の自由に関する重大な懸念が生じている」と指摘する。「この2つの権利は中国の憲法で認められているが、現実には、政府はこれらの自由を厳しく取り締まっている。テクノロジーが抑圧された集団の追跡を容易にすることを許してはならない」と述べた。
新疆ウイグル自治区の人権侵害への関与
ハイクビジョンは世界の監視カメラの5分の1以上を生産しており、その市場価値はソニーを上回っている。同社の台頭は、中国共産党政権の監視ニーズの拡大と関係している。
2011年、ハイクビジョンは12億ドルの重慶市「安全都市」監視プロジェクトの契約を獲得し、3年間で20万台の監視カメラを設置した。中国政府は、中国電子科技集団(チャイナエレクトリック)が投資した国有企業中電海航集団を通じて、ハイクビジョンに約40%の出資をしている。
ハイクビジョンは、中国での集団拘束や監視などの権利侵害に関与しているとして、2019年に米政府から貿易ブラックリストに掲載された。中国共産党政権が新疆ウイグル自治区のイスラム教徒を弾圧するために同社が技術面で支援しているとして、厳しい批判にさらされてきた。
中国に関する連邦議会・行政府委員会(CECC)の2019年の報告書は、ハイクビジョンは新疆で大量の個人データを集約・分析するシステムの「構築、運用、継続的な維持に直接関与していた」と指摘している。
米ワシントンの人権団体「ウイグル人権プロジェクト(UHRP)」のディレクターを務める、ルイザ・グレーブ氏はエポックタイムズの取材に「完璧な監視と人種プロファイリングを提供し、ウイグル人に絶対的な恐怖を与えている」と非難した。
ハイクビジョンは、中国政府がウイグル人を弾圧するのを手助けしているという報道を否定しているが、米議員などは厳しい目を向けている。
マルコ・ルビオ上院議員は、人権侵害を助長する役割を果たしたとして同社への制裁を要求。「ハイクビジョンの技術は、法輪功やウイグル人などを含む中国共産党のおぞましい人権侵害や大量虐殺を可能にする中心的な役割を果たしている」とガーディアンに宛てた声明で発言した。
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