死者を納める「紙棺材」は段ボールの棺桶【現代中国キーワード】

2023/01/06 更新: 2023/01/25

紙棺材

まさか、と言うべきか、やはりと納得すべきであるかは分からない。昨今の動画から「紙棺材(ジーグァンツァイ)」という中国語が聞こえた。「紙製の棺」のことである。

画面で見る限り棺(ひつぎ)の形はしているが、要は段ボール箱である。人が最後にどのように葬られるかは死んだ本人には知る由もないが、まさか家電製品のような紙箱に入れられるとは思っていなかっただろう。

北京や上海をはじめ、中国の各都市でコロナ関連とみられる病死者が爆発的に増え、火葬場も数十日待ちであることは、すでに多く伝えられてきた。

親族を亡くして悲しみに暮れる遺族をさらに鞭打つのは、異常な待機日数ばかりではない。火葬費用も通常の10倍に高騰しており、約3万元(60万円)に上るという。

需要と供給の関係によって価格変動するのが資本主義である、などという理屈は聞きたくもない。人の不幸につけこんで値を上げるなど、不条理以外の何物でもないはずだ。

本来、中国人の葬儀は、今ではだいぶ世俗化した形式ではあるが、特に父母や親族の長老を弔う場合は、盛大なセレモニーとして行われる。大量の紙銭を焼き、雇った「泣き女」に号泣させる。死者を納める棺も、可能な限り豪華なものにするのが通常である。

先の「紙棺材」にしても、おそらく木製の棺が品薄となり、あまりにも値段が高騰したために登場した代替品であるに違いない。中国の病は、人間の体だけでなく、社会全体にも及んでいる。