米国領空域に漂っている中国の気球をめぐり、国防総省のパトリック・ライダー報道官は3日、「明らかな主権侵害」と述べた。ホワイトハウスは予定していたブリンケン国務長官の5年ぶりの北京訪問の延期を発表した。
米国を横断する気球は日本時間4日午前6時現在、中部アラバマ州を飛行している。ライダー氏によれば、高度約6万フィートの高さで東に移動しており、今後数日間に渡り米国内を飛行するとの見通しを示した。
中国から飛来した気球は、両国の対立の新たな火種となっている。ブリンケン氏の訪中延期について、政府高官は省庁や議会との協議を経たうえで現時点での訪中は適切ではないと結論付けたと記者団に語った。
中国政府は異例の融和的な態度を示し、気球が中国から出発したものであることを認めた。気球は、気象など科学研究に用いられる民間無人機で、風の影響を受けて制御できなくなり「予定ルートから大きく外れた」と釈明した。
中国外交部報道官は3日、「中国側は気球が不可抗力で誤って米国に入ったことを遺憾に思う。中国側は引き続き米国側とコミュニケーションを維持し、今回の不可抗力による想定外の状況に適正に対処する」と記者の質問に答えた。
いっぽう、中国の気球のルートは米軍基地周辺を通過しており、不可抗力で侵入したとは考え難いとの見方が米国側で強まっている。
「米国は中国側が遺憾を表明したことを知っている。しかし、気球が米国の領空に侵入したことは明らかに主権侵害であり国際法違反だ。このような状況の発生は受け入れられない」とライダー氏は述べた。また、進路を変えるなどの操作性は維持されているとも指摘し、中国側の主張を退けた。
共和党のトム・コットン上院議員は早期に国務長官の訪中を中止するよう呼びかけた。2024年の大統領選出馬を表明しているトランプ前大統領は気球を「撃墜すべき」と主張した。
気球を追跡する国防総省によれば、「商業機の飛行高度よりはるかに上空を飛行している。地上にいる人に軍事的または身体的脅威にはならない」という。撃墜案も浮上したが、破片落下による安全上の懸念があり見送られたと説明した。
報道によると、気球は中国からアラスカ州のアリューシャン列島を経て、カナダ北西部を飛行し、2日にモンタナ州に到着した。モンタナ州にはマルムストローム空軍基地のほか、全米で3つしかない核搭載ミサイル発射基地がある。
米シンクタンク、ハドソン研究所の上級研究員で政治・軍事分析センターのリチャード・ウェイツ氏は、中国の目的は明らかになっていないが、衛星では観測しきれない追加情報の収集を図っている可能性があると米国営放送VOAに語った。
マルコ・ルビオ上院議員は「単なる気球だ」と軽視しないよう警告している。この事件によって米国人は目覚め、中国共産党が冷戦終結以来、米国の地政学的な競争相手であり敵対国であることをはっきり理解すべきだと力説した。
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