岸田文雄首相の突然のウクライナ訪問は習近平中国共産党総書記のモスクワ訪問と時期を同じくして行われ、まさに象徴的な出来事となった。
2023年3月の訪問は、地政学的な分裂が拡大し、日本がウクライナなどの国への武器輸出を許可する政策の大幅な転換を検討する一因となっていることを裏付けている。
この動きは、インド太平洋における日本の地位と防衛産業を強化する可能性があると、専門家は指摘している。
国際安全保障産業協会(ISICジャパン)のジェームズ・アンジェラス会長は、「『武器輸出三原則』の緩和は、日本の防衛産業の復活だけでなく、外交、経済援助、開発イニシアティブの強化にもつながる」とFORUMに語っている。
シンクタンクの笹川平和財団安全保障研究プログラム主任研究員の渡部恒雄氏はFORUMに対し、「日本の防衛装備品の輸出や防衛分野の能力開発協力は、世界と地域の安全保障に貢献する」と述べている。
日本経済新聞によると、岸田首相は武器輸出規制を見直すよう議員に要請し、軍事輸出の拡大は侵略者から国を守るための重要な手段になりうると主張したという。
見直し案では、「国際法に反する侵略に直面している国に、広範な装備を移転できるような制度的な取り決め」 を求めている。 政府と国会は、2023年4月の地方選挙後に武器輸出を議論する予定だ。
従来、日本は武器輸出三原則と呼ばれる武器売却禁止令を定めており、攻撃や脅威にさらされている国への支援は、資金援助や人道支援、非致死的装備に限られている。 軍用機や装甲車、ミサイルなどの装備品を開発・生産に協力している国に対しては、これらの装備品を譲渡することに限定されている。
ウクライナに対しては、2022年2月にロシアが主権国家である隣国ウクライナを侵攻して以来、日本は防弾チョッキ、発電機、ソーラーライトの提供、地雷除去支援を行ってきた。 日本は最近、ウクライナ政府に約7,350億円(55億ドル)の追加援助を約束したほか、2,000人以上のウクライナ人避難民を受け入れ、住居の提供や仕事と教育の支援を行っている。
また、輸出規制を変更して装備品の移転を可能にすれば、欧米列強との軍事協力やインド太平洋地域での防衛協力が進み、自治領である台湾周辺の緊張激化など、中国共産党軍による主張強化への対策にもなり得る。
「防衛装備品の輸出は、フィリピン、ベトナム、台湾の自衛能力を強化するのに役立つだろう。 日本やこれらのパートナーに問われているのは、安全保障を強化するための最適な手段は何かという点だ」 と、国際基督教大学政治国際学部のスティーブン・ナギー教授はFORUMに述べた。
ナギー教授は、人道支援の継続と高度な防衛技術の輸出の微妙なバランスを取ることが、成功のために重要であり、そうした輸出に対する日本国民の支持を得る上でも必要だと付け加えた。
同教授はさらに、「日本は、防衛輸出産業を公共財として活用することに焦点を当てたブランドを開発する必要がある。 高品質で評判が良く、信頼できるものを強調すべきだ」と述べた。
また、防衛輸出の増加は、日本の防衛産業の潜在的な市場を広げ、日本の長期的な安全保障を後押しすることにつながる可能性もある。
渡部氏は「将来、効果的で安価な防衛態勢を構築するためには、日本が競争力のある防衛産業を持つ必要がある」とした上で、 「日本政府主導による防衛技術の研究開発は、米国国防高等研究計画局(DARPA)のように、非軍事技術や産業への波及効果で将来の経済発展に貢献するだろう」と述べている。
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