入管法改正へ…保護すべきは保護を 「偽装難民」なら退去を

2023/05/26 更新: 2023/05/29

出入国管理法改正案が衆議院で可決され、現在参議院で審議中だ。出入国管理局によると現行法ではテロリストでも難民申請で退去を避けられる。「偽装難民」が日本に少なからずいて、退去を回避する人がいる。法改正で適正に帰国させることが可能になり、問題は解決に向かうだろう。

「難民」とは

「難民」とは、難民条約の1条によれば「人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であることまたは政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するため、国籍国の保護を受けることを望まない者」と定義されている。

ところが、日本にいる難民申請する一部の外国人は、これに当てはまらない。入管法の改正案はこうした人々の制度の濫用を防ぐものだ。そのポイントはいくつかあるが、この「偽装難民」、つまり迫害される難民と自称して日本での就労を目的に働く人々の問題に絞って、この記事で論じてみよう。

エポックタイムズに5月15日に掲載された記事「日本で外国人が一番多い街、埼玉県川口市の現状から考える」で、私は埼玉県南部などの一部地域で、難民と自称する外国人が増え続け、地域住民とトラブルになっていることを紹介した。
 
現在の入管法では、退去すべきことが確定した外国人については、原則として退去まで収容施設に収容することになっている。ところが、難民認定申請を濫用して退去を回避する人もいる。また、犯罪者が難民申請をし、日本に留まるケースもある。収容の長期化を防止するために、「仮放免」として外で生活することが認められる場合もあるが、逃亡する事件が起きている。

埼玉県南部では、そうした仮放免の立場の人たちが、日本で就労していた。外国人が日本で働く場合にはさまざまな規制がある。それにとらわれず、日本で働くための手段として難民と自称している疑いがある。 

これへの対応は、法律の隙間をなくし、早めに難民かどうかを認定し、送り返すことをするしかない。入管法の改正案では、犯罪を起こすと難民申請ができず、また審査の回数が原則制限される。現在の案では2回認められなければ、新たな証拠を示せないと再認定は難しくなる。これは、違法な立場で日本に居続ける外国人をなくすことにつながる。
 
政府・与党は、維新、国民民主党と協議し、収容をめぐる手続きに第三者のチェックを入れること、審査の厳格化などの修正を検討することで合意した。立憲民主党、共産党などは逆に、もっと入国審査を緩くする対案を出している。日本を難民だらけにしたいのだろうか。その行動は、理解に苦しむ。

現実に起こっていることは、就労目的の難民申請

私は埼玉県南部で、トルコ国籍の人が「クルド人として政治迫害をされる」政治難民と主張し、解体業に就き集住してしまったことを、前回の記事で紹介した。トルコ国籍を保有する難民申請者の公式統計はないが、一説には5000人にもなるという。埼玉県南部にはクルド系住民が約2000〜3000人程度住むとされる。実態調査は行われておらず、詳細は分からない。
 
トルコ政府は、公式にはクルド人弾圧政策を否定している。日本経済は衰えたが、可処分所得はトルコの5倍以上だ(国際市場経済CEICデータ調べ)。トルコ・リラはこの2年下落が続く。日本での生活は魅力的に映るかもしれない。

埼玉県では「難民」という曖昧な地位のためか、このトルコ国籍の人たちは日本に同化する意欲が見えなかった。住民への迷惑行為、子供の未就学などの問題が出ていた。また生活も豊かそうではなかった。曖昧な状態に居続けることは、こうした立場の外国人にも不幸だ。

難民を引き受けることの重い意味

また私は埼玉県南部での外国人と住民トラブルの報道を、個人のサイトとエポックタイムズなどいくつかの媒体で行った。日本国内で大きな反響があった。既存メディアが人権配慮のためか、これまで全く伝えなかったためだ。また英語に翻訳して自分のサイトに掲載したところ、世界各国に広がった。Twitterとメールで、トルコから100件以上、ドイツ人、スウェーデン人から、1件ずつ反響があった。その反響の大半は「あなたに賛成する」「クルド人に気をつけろ」というものだった。日本国内、国外のクルド人からの批判も大量にあった。

現在、トルコ政府はクルド人のテロ組織と戦闘状態にある。クルド人のテロ組織は悪質で、これまでの60年間の武装闘争で、トルコ人4万人を殺害したとトルコ政府は主張している。トルコは大統領選の最中で、6月中に再投票が行われる予定だ。一部市民はテロとの戦いに、かなり熱くなっている。
 
また欧州各国で、クルド人難民や移民が問題を起こしている。昨年12月にはフランスのパリでクルド人による暴動が発生した。クルド人に対するテロへの抗議だが、パリ市民には迷惑だろう。日本には、こうした中東の争い、欧州の移民の問題はほとんど伝えられない。

私は、外国からの感想に下手な英語で感謝を述べた。そして私にも、日本人にも、クルド人を差別、攻撃する意図はなく、人種を問わずに、法律に違反する外国人の摘発だけを求めていると説明した。そして反響の大きさに怖くなり、自分のサイトに掲載した英文記事は削除した。

つまり難民問題に関わるということは、大変重い意味を持つ行為なのだ。憎悪の歴史を含んだ他国の政治的争いを引き受けてしまうということだ。平和な日本に住んでいる私は、そのことの認識が足りなかった。私だけではない。日本で安易に「難民を助けろ」と叫ぶ人に、そうした覚悟があるとは思えない。

また私の原稿に対して、日本国内から「〇〇人を叩き出せ」という排外主義的、人種差別的な反応が多数あった。こうした問題を曖昧に放置し続けると、国内に外国人に不満が集積し、社会に危険な思想がはびこってしまう。法律を明確に、そして厳正に適用して問題を解決することが必要であると思った。

本当に助けが必要な人を守る

ただし不当な迫害、人道に照らし、許されない蛮行をする国がある。中国共産党政権は、法輪功などの宗教、ウイグルなどの少数民族を、政権に好ましくないと勝手に判断し、罪のない人を殺害している。こうした迫害を受ける人は、難民として、世界も日本も救う必要がある。

ただし、現在の日本の入国管理制度は「ゆるすぎる」。制度の隙間をついた「偽装難民」が流入し、げんに埼玉南部では住民とのトラブルや治安悪化が顕現化した。入管法改正に反対する人は、ぜひ現地に行って問題を直視して、問題を解決してほしい。

入管法を速やかに改正して、法の抜け穴を埋める。その上で、難民、そして移民、外国人労働者の問題を考えるべきだろう。ズルをする人をなくし、公平な制度を作ることが、問題解決への出発点になる。

ジャーナリスト。経済・環境問題を中心に執筆活動を行う。時事通信社、経済誌副編集長、アゴラ研究所のGEPR(グローバル・エナジー・ポリシー・リサーチ)の運営などを経て、ジャーナリストとして活動。経済情報サイト「with ENERGY」を運営。著書に「京都議定書は実現できるのか」(平凡社)、「気分のエコでは救えない」(日刊工業新聞社)など。記者と雑誌経営の経験から、企業の広報・コンサルティング、講演活動も行う。
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