ウクライナの反転攻勢の影でロシアは崩壊が始まっている

2023/05/27 更新: 2024/06/13

ウクライナ侵攻と反プーチン勢力の台頭

ロシアは2022年2月にウクライナへ侵攻したが未だに勝利が得られない。ロシア軍は約20万人の戦力でウクライナに侵攻したが今では20万人を超える戦傷者を出している。ロシア軍は侵攻時と同じ損害を出し、さらに30万人を超える動員を行ったが勝利は見えない。

ロシア軍はウクライナ東部で攻勢を行なうがウクライナ軍の戦線を突破できないまま膠着状態が続いている。ロシア軍はウクライナ東部のバフムトで唯一攻勢に成功しているが民間軍事会社ワグネルによる功績が大きい。だがロシア軍と民間軍事会社ワグネルの対立が囁かれている。

ウクライナ軍の反転攻勢が予想されている時にウクライナ領からロシア領に向けて、準軍事集団「ロシア義勇軍団」と「自由ロシア軍」が5月22日にベルゴロド州を襲撃した。侵攻は24時間で終了したがプーチン大統領には政治的な痛手を追わせる結果になった。

 

ロシア分裂が進行 

プーチン大統領は恐怖政治で政権を維持しているが、ウクライナ侵攻で敗北が予想されると複数の対立勢力が産まれるようになった。当初は民間軍事会社ワグネルのプリゴジン氏が反プーチン勢力として見られるようになった。何故ならウクライナ侵攻で唯一成功しているため影響力が増したのだ。

しかもプリゴジン氏は分析能力が高く、危険を察知すると占領したとされるバフムトをロシア軍に渡し後退する動きを見せている。こうなると仮にバフムトをウクライナ軍に奪還されても責任はロシア軍が負うことになる。プリゴジン氏はバフムト攻略の功績を得たまま安全な場所へ逃れられる。ウクライナ軍の反転攻勢で生き残ることができればプーチン大統領に代わり自分が次の大統領になることも可能なのだ。

そんな時にウクライナ領からロシア領のベルゴロド州を準軍事集団「ロシア義勇軍団」と「自由ロシア軍」が襲撃する。ウクライナは反プーチン大統領派の準軍事組織としているが真偽は不明。さらにウクライナ侵攻で捕虜になったロシア兵が参加していると言われるが、反プーチン大統領派で構成されていることは間違いないだろう。

ロシア義勇軍団を率いるカプースチン氏はロシアの民族主義者として知られ、単一民族のロシア国家を望むと公言している。今のロシア連邦は複数の国の集まりであり複数の民族で構成されている。ならば今のロシア連邦の解体か異民族の排斥を意味している。

 

ロシア軍の弱体化を明らかにした

準軍事集団「ロシア義勇軍団」と「自由ロシア軍」が5月22日にベルゴロド州を襲撃して24時間後にウクライナ領へ戻っている。この時の戦力は2000から4000人と言われ明確な戦力は明らかにされていない。だが24時間でロシア軍の状態が世界に示された。

ロシア軍を見ると敵を追撃していない。結論から言えば、ロシア軍は追撃部隊を投入できないほど戦力が枯渇している。ロシア軍から見てもベルゴロド州からウクライナ軍が攻勢に出る可能性は有る。だから国境に防衛部隊を配置しているが、国境防衛に2万人以上の戦力を割けていないことが明らかになった。

準軍事集団「ロシア義勇軍団」と「自由ロシア軍」がウクライナ領へ帰還する時にロシア軍は追撃部隊として500から600人規模の1個大隊を投入していない。基本的に逃げる敵部隊に対して1個大隊規模の追撃部隊を投入する。

さらに追撃部隊を投入するならウクライナ領まで侵攻させる。兵站を考慮すれば国境から内陸に向けて25kmまでが侵攻限界だが、今回のロシア軍は基本が実行されていない。第二次世界大戦時のソ連軍はドイツ軍に対して実行しているから知っているはず。それでも今のロシア軍は実行しないのだから戦力の枯渇が深刻なのだ。

 

プーチン大統領よりも危険な思想

ウクライナ軍の反転攻勢が予想される時にベルゴロド州で発生した襲撃は露骨な陽動。準軍事集団「ロシア義勇軍団」と「自由ロシア軍」はウクライナ軍から支援を受けた組織であり協力関係であることは明らか。この襲撃はロシア領内で反プーチン大統領派が増加する可能性が有るので、政治的にもプーチン大統領に打撃を与えることは明白。

プーチン大統領はソ連時代の栄光を求め複数の国の連邦と異民族を認めている。それに対してロシア義勇軍団は単一民族のロシア国家を望むことが明らかなので、同じ思想を持つロシア人が増加することは、今のロシア連邦の解体か異民族の排斥を追求することになる。これはプーチン大統領よりも危険な思想であることを意味しているので、仮にプーチン大統領がクーデターで消えたとしても次の指導者はプーチン大統領よりも危険な独裁者になることを意味している。

これは明白だが今のウクライナ軍は背に腹は代えられない。少しでも戦力が多い方が好ましいことと、ロシアを政治的に分裂させることは都合が良い。さらにロシア軍から反プーチン大統領派が増加すればロシア軍の弱体化を意味する。ならばウクライナ軍による反転攻勢は有利に進められる。

 

プーチン大統領の未来は無い

ロシア各地で火災が発生していることが知られている。これが反プーチン大統領派による犯行であれば、既にロシア各地で革命やクーデターが進行していることを意味する。さらにプリゴジン氏などの次の有力な指導者も台頭していることから、ウクライナ軍による反転攻勢を悪用してロシア国内で覇権争いが発生するだろう。

現在確認されている指導者候補はプーチン大統領よりも危険であることで共通している。そうなればウクライナ侵攻がロシアの敗北で終わったとしても、次の新生ロシアは今よりも危険な国となるだろう。そうなると平和ではなく今よりも危険な戦争が待っていることを意味する。

ならばプーチン大統領は保身のために戦術核を使う可能性が有る。さらにウクライナ軍をロシア領に進撃させないためにウクライナの原子力発電所の爆破と戦術核の使用で放射能による汚染地帯を障壁に変えるはずだ。何故ならロシア軍がウクライナ軍の進撃を阻止できないなら放射能による汚染地帯しか止める手段が無いからだ。この手であればウクライナ軍にいる「ロシア義勇軍団」と「自由ロシア軍」を撃破可能。少しでも敵を減らすにはプーチン大統領には戦術核しか残されていない。それだけプーチン大統領は追い詰められているのだ。

戦争学研究家、1971年3月19日生まれ。愛媛県出身。九州東海大学大学院卒(情報工学専攻修士)。軍事評論家である元陸将補の松村劭(つとむ)氏に師事。これ以後、日本では珍しい戦争学の研究家となる。
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