検閲めぐりバイデン政権とSNSの接触禁止命令 米司法省が命令停止を要請も連邦判事が却下

2023/07/16 更新: 2023/07/16

米国の地方裁判所が4日にバイデン政権がソーシャルメディア上での特定の投稿に対し規制を促していたことが憲法が保障する言論の自由を侵害している可能性が高いとして、複数の連邦政府機関の関係者やホワイトハウスの当局者がソーシャルメディアを運営する各大手IT企業に接触することを禁じた差し止め命令を出した。

これに対し、米司法省が命令の停止を要請していたが、米連邦判事は10日、司法省の要請を却下した。

トランプ前大統領が任命した、ルイジアナ州西部地区連邦地方裁判所のテリー・A・ドーティ判事は4日、判決文の中で、バイデン政権側にSNS投稿への規制を促す法的権利がないとしている。

同判決は「ソーシャルメディア・プラットフォームに投稿された、保護された言論の自由を含むコンテンツの削除、消去、抑圧、削減を何らかの方法で促し、奨励し、圧力をかけ、誘導する目的で、ソーシャルメディア企業に接触することを禁止しているだけである」と説明した。

ドーティ判事は新型コロナウイルス感染症のパンデミックの期間、政府は「オーウェルの(1984年の)真実省」のような役割を引き受けたと指摘。サイバーセキュリティ・社会基盤安全保障庁(CISA)や国土安全保障省(DHS)、司法省(DOJ)、疾病管理予防センター(CDC)などを含む政府機関が、ソーシャルメディア上の投稿、企業、ユーザーに対しあらゆる措置を取ること禁じるとした。

「この仮差し止め命令は多数の政府機関を巻き込んでいるが、思われるほど広範なものではない」とした。

判決文では、ザビエル・ベセラ保健社会福祉長官、ヒュー・オーチンクロス博士、国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のファウチ所長、保健福祉省(HHS)のヴィヴェク・マーシー医務総監、ホワイトハウスのカリン・ジャン=ピエール報道官ら当局者数人を名指ししている。

バイデン政権との接触禁止の対象企業には、ツイッター、フェイスブック、ユーチューブ、ワッツアップ、ティックトック、ウィーチャットなどが挙げられ、最後の2社は中国共産党との関係が指摘されている。

ルイジアナ、ミズーリ両州の司法長官(共和党)は2022年、連邦政府が保守派の投稿を意図的に封殺しようとしているとしてバイデン政権を提訴していた。

サイバー攻撃、選挙妨害、国家安全保障上の脅威に対応する場合には、大手IT企業と接触することを許可するとしている。

同判決は最終裁定ではなく、仮差し止め命令である。

また判決文の中では、連邦政府機関や当局者が、ソーシャルメディア上での新型コロナワクチンへの批判的な投稿や2020年の米大統領選挙の結果に疑問を呈する投稿への規制を「明らかに奨励した」「強制した」あるいは「共同で関与した」ことを立証する上で、この訴訟を起こした両州の司法長官が勝訴する可能性が高いとした。

この判決に対し、司法省側は、第5巡回区連邦控訴裁判所に差し止め命令の緊急停止を申請。ドーティ判事の判決は「非常に曖昧で広範である」と判決に従わない姿勢を示した。

これを受け、ルイジアナ、ミズーリ両州の司法長官が、バイデン政権と大手IT企業の接触を禁じる差し止め命令を停止するよう求めた司法省の要請に反対する請願書を提出した。

9日、両州の司法長官は「この訴訟における証拠は、政権の『米国民と民主主義のプロセスに対する重大な危害を防ぐ』とされる措置が、新型コロナウイルス感染症や選挙、その他の政治的に関心の高い話題について、(政府に)好ましくない見解を検閲するよう大手IT企業に圧力をかけ、誘導することを大いに示している」と述べている。

「結局のところ、彼らの立場は裁判所の判決に対して根本的に反抗的だ。これは、政府がソーシャルメディア上の核心的な政治的言論を検閲することによって、憲法修正第1条の権利を侵害し続けることを示している。停止申し立ては却下されるべきである」と指摘した。

ルイジアナ州のジェフ・ランドリー司法長官(共和党)は、判決後にエポックタイムズの番組『米国思想リーダー』で、「これは間違いなく、現代史における憲法修正第1条の最も重要な事件の1つになるだろう」と語った。

「判事の意見を見ると、これは基本的に、我が国の歴史上、米国の言論を制限しようとする連邦政府の最も大規模な事業の1つである」とし、「今回の事件で明らかになったことは、すべての米国人にとって……衝撃的であり、ぞっとするようなことで、懸念すべきことだ」と述べた。

米当局は以前、大手IT企業に規制を促していたことについて、予防可能な患者の死亡を減らすため、新型コロナワクチンに関する「誤った情報」を流布させないことが目的だと主張していたが、これは言論の自由を擁護する人々や保守派、新型コロナの代替療法を推進する医師らの批判の的となっている。

ジャン=ピエール報道官は判決後の5日、記者団に対し、バイデン政権は「この判決には確かに同意できない」とし、「致命的なパンデミックや選挙に対する外国からの攻撃のような困難に直面した場合、公衆衛生、安全、治安を守るための責任ある行動を引き続き推進していく」と表明した。

また「ソーシャルメディア・プラットフォームには、そのプラットフォームが米国民に与えている影響を考慮しつつ、投稿について独自の選択をする、あるいは行動を起こす重大な責任がある、というのが我々の見解である。ご存知のように、彼らは民間企業であり、それに従って行動するのは彼らの責任だ。だから、我々はこれからもそのような形で責任を持ち続けるつもりだ」とした。

ニューヨークを拠点とするエポック タイムズの速報記者。
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