温室効果ガスの排出量を正味ゼロにする「ネットゼロ」を急ぐあまり、中国共産党に支援されたハッカーが豪州のエネルギー供給網の脆弱性を突く可能性があると、豪州のジェームズ・パターソン上院議員は警告した。
豪クイーンズランド大学とサーキュラーPVアライアンスの試算によると、豪州が2050年までにネットゼロを達成するためには、27億枚の太陽光パネルが必要だと推定される。
太陽光発電を利用する上で不可欠なのは、パネルを電力網に接続し、インターネット経由で遠隔操作できる「スマートインバーター」の設置だ。
現在、豪州のスマートインバーターの6割は、中国メーカーのSungrow、GoodWe、そして次世代通信規格「5G」を使った同国の無線ネットワークへの参入を禁止されたファーウェイ(華為技術)よって供給されている。
この3社は、すべて情報収集活動への支援を義務付ける中国政府の「国家情報法」の対象企業だ。
パターソン氏は21日の声明で、中国から供給されたスマートインバーターには「サイバー攻撃に脆弱な、悪用可能な欠陥」があると述べた。
「送電網のような重要ネットワーク・インフラは、中国を含む外国の権威主義国家の情報機関にとって大きな関心事だ」
「これらのシステムに対する組織的なサイバー攻撃は、特に地域的な地政学的危機の際には、壊滅的な結果をもたらす可能性がある。政府は手遅れになる前に対応すべきだ」と同氏は警告した。
米国でも同様の問題が起きており、米電力会社は2002年から2021年の間に、中国から1億7100万台のインバーターを輸入した。中国製の部品にはハッカーによる悪用可能な「バックドア」が組み込まれている可能性があり、これらの機器がサイバー攻撃に脆弱であると指摘されている。
EV普及にはハッキングのリスクが伴う
電動化の進展に伴い、電気自動車(EV)のシステムへのハッキング問題も指摘される。
「電気自動車には、バッテリーやモーターからクルーズコントロールやブレーキに至るまで、すべてを制御するチップやソフトウェアが搭載されている」と米ウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。
一方、EVエコシステムにおけるプライバシー問題に取り組むテック企業「Privacy4Cars」によれば、1台の車には60台のオンボード・コンピューターが搭載され、1時間あたり約25ギガビットのデータを収集している。その中にはテキストメッセージ、通話履歴、ナビゲーションの履歴、住所などが含まれるという。
世界中の政府がネットゼロの未来に向けて社会を推進する中、こうしたリスクは拡大し続けている。
米国のバイデン大統領は、新車販売に占めるEVの比率を2030年までに50%とする目標を盛り込んだ大統領令に署名した。
豪州でも、EVの販売台数は2022年比で約280%増と急増しており、中国の自動車メーカー、BYDやMGモーターなどはいずれも低価格帯の製品で着実にシェアを伸ばしている。
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