オーストラリアと米国の国防相と外相は2023年7月下旬、両国の軍隊数千人がオーストラリア大陸全域でこれまでにない規模の合同軍事演習を実施するなか、戦力態勢、兵器開発、新興技術などを含む安全保障協力を深化させることで合意した。
さらに、通常兵器搭載の原子力潜水艦をオーストラリアが取得することになっている英国との3か国構想の進展に注目しつつ、訓練や演習、統合防空ミサイル防衛などの分野で日本との協力を拡大する計画を発表した。
ペニー・ウォン(Penny Wong)豪外相、リチャード・マールズ(Richard Marles)豪国防相、アントニー・ブリンケン(Antony Blinken)米国国務長官、ロイド・オースティン(Lloyd Austin)米国国防長官は、オーストラリアのブリスベンでの会談後の声明で、1951年に締結された豪米同盟は「かつてないほど強固なものになっている」とし、 「共通の価値観の絆に基づくこのパートナーシップは、安定と繁栄、そして平和を維持するという共通の決意を前提とした、戦略的な利益をもたらすものだ」と述べた。
その他の取り組みとして、両国の閣僚は、オーストラリア北部の空軍基地やその他の軍事施設の整備を継続すること、2023年から米国海軍潜水艦のオーストラリアへの寄港をより長期的かつ定期的に実施すること、オーストラリアにおける米国陸軍水上艇の定期的なローテーションを開始すること、地域海域の認識を高めるために米海軍の海上哨戒機および偵察機をオーストラリアに派遣することを挙げた。
また、2025年までにオーストラリアで誘導多連装ロケットシステムを共同製造するなど、「同盟の非対称能力を確保するための重要な技術と革新」についても協力することで合意した。 一方、米国はオーストラリアでのミサイル生産を支援するため、誘導兵器技術の移転を加速させる予定だ。
この数十年で国の軍の即応性を最も包括的に評価した「国防戦略見直し」は、オーストラリア国防軍に「敵対勢力を我が国沿岸から遠く離れた場所でも危険にさらす」ことを可能にする長距離攻撃能力の開発を提言している。
オーストラリアのABCニュースによると、オースティン国防長官は共同記者会見で、「我々はまた、オーストラリアが米国から調達した重要な軍需品の整備、修理、点検を行えるようにするための措置を講じることを発表できることを嬉しく思う」と語り、さらに、 「こうした努力は、相互運用性を強化し、重要な任務のための維持・兵站能力を強化することで、抑止力を強化することになる」と述べた。
両国の閣僚はまた、演習や作戦を含め、両国の戦力態勢協定(Force Posture Agreement)の下で空間の統合と協力を強化する意向を表明した。
1985年に初めて開催された豪米閣僚協議は、同盟国にとって過去最大規模のタリスマン・セイバー演習の最中に行われた。この演習には十数か国から3万人の部隊が参加し、2週間にわたってあらゆる戦闘領域で実戦訓練や模擬訓練が行われた。
4人の閣僚は、フィジー、インドネシア、パプアニューギニア、トンガがタリスマン・セイバーの初参加国であり、インド、フィリピン、シンガポール、タイが初参加のオブザーバー国であることに触れ、地域軍との相互運用性を強化することへのコミットメントを改めて確認した。
また、インド太平洋の安定と安全保障を支援するため、インド、インドネシア、日本、フィリピン、韓国を含む提携国との協力の機会を模索していくと述べた。 さらに、2024年初頭に予定されている米国沿岸警備隊の哨戒艇の太平洋への配備は、「違法・無報告・無規制(IUU)漁業を含む海洋安全保障の優先事項に対処するため、この地域における海洋領域の認識と訓練をさらに進める」ことになる。
ブリスベン滞在中、オースティン国防長官は、中国が地域の安定を損なおうとしていると警告した、とABCニュースは伝えた。
「我々は、東シナ海から南シナ海、そしてここ南西太平洋に至るまで、中国による憂慮すべき威圧行動を目の当たりにしてきた。今後も同盟国や提携国が中国のこうした威嚇行為から自国を守れるように支援を続けていく所存だ」と述べた。
世界が不安定で複雑な未来に直面している今、パートナーシップは非常に重要だ、とマールズ国防相は付け加えた。
ABCニュースによると、マールズ国防相は「我々は、法治に基づく世界秩序が東欧で脅威にさらされているのを目の当たりにしているし、インド太平洋でも圧力がかかっているのを目撃している」と述べ、 「これらすべてに関して進むべき道は明らかではないが、ひとつだけはっきりしていることがある。それは、今こそ友人と緊密に協力すべき時であり、オーストラリアにとって米国ほど優れた友人はいないということだ」と語った。
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