中国とロシアが国際原子力機関(IAEA)に送付した東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出をめぐる質問状で、日本政府は18日付けで回答した。中露共同の質問は「科学的根拠を伴わない、曖昧な」内容であり、「科学的な分析を受け入れる意思がないかのようだ」と批判した。
日本政府は22日の関係閣僚会議で、福島第一原発の処理水の海洋放出を24日にも始めることを決定した。
中露両政府は昨年より、ALPS処理水海洋放出に関する批判的な質問状をIAEAを通じて世界各国に発信している。昨年の日本政府の回答は「不十分だ」などとして、今年7月26日にあらたに20項目の追加質問を送付した。質問は昨年からの合計で36項目におよぶ。
日本政府は最新の回答で、中露の質問内容が「科学的証拠を伴わない多くの曖昧な声明や質問が含まれており、前回の日本の回答を無視しているようだ」と指摘。両国に科学的な討論を求めた。
さらには、中露による「独自の主張や疑問が多分にみられる」とし、国際機関による分析も「受け入れる意志がないかのようだ」と非難した。
中露の質問は、例えば次のようなものがある。「原発地域における処理水の無期限保管」「処理水が“飲める”といった日本の主張の実効性」「事故が発生した原発と通常の原発とでは排水成分が異なる」など。
日本の回答はそれぞれ次の通り。「これ以上のタンク建設は不可能であり、地震頻発地域での長期保管はリスクが高い。IAEAも持続可能な解決策が必要と結論づけている」「ALPS処理水は日本の安全基準を満たす。いっぽう原子力施設から放出された水を飲む国は存在しない」「中国を含む多くの世界の原発は福島第一原発のALPS処理水より多くのトリチウムを排出。中国の台山原発の10分の1だ」
日本の垂大使「中国は時代に逆行」
IAEAは7月4日、ALPS処理水の海洋放出の安全性を評価する報告書を公表。放出は人々や環境に対してほとんど放射線の影響を及ぼさないと結論づけた。8月22日には、日本政府の海洋放出決定を受けて、継続的で公開的なモニタリングを実施しているとの声明を出した。
同日、駐中国日本大使館の垂秀夫大使は、孫衛東・中国外交部副部長からALPS処理水の海洋放出について申入れを受けた。垂氏は、日本が海洋放出するのは「汚染水」ではなく「ALPS処理水」であり、中国側はこの用語を使うべきだと返答した。
海洋放出をめぐり、中国および香港は水産物など日本製食品の輸入を制限した。これについて、「科学的根拠に基づかない措置は受け入れられない、EU諸国等が輸入規制の撤廃を進めている中で、中国のみが流れに逆行している」と垂氏は指摘した。
中国当局は海洋放出決定のニュースを速報し、国営メディアや外交部報道官を通じて、日本を「無責任」「犯罪行為」などと厳しく批判している。
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