「人為的な洪水」から1カ月 黒い水は引かず、過酷な生活を強いられる被災民=中国 河北

2023/09/03 更新: 2023/09/02

人為的なダム放流がもたらした洪水から1カ月が経つが、甚大な被害を受けた河北省の一部の地域では、依然として水は引いておらず「移動にはボートが必要な状況」であることが現地市民による動画投稿などでわかった。

内陸部の町で「ボートが必要」

家を失った被災民は、政府からの支援がほとんどないに等しい過酷な環境での生活を強いられており、急死する人も相次いでいる。

(8月27日の河北省霸州市の状況。「水深は50cmほど」だという。SNS投稿動画)

(9月1日の、ある被災地の状況。「水は黒くなっている」と投稿者は嘆いている)

中国メディアによると、河北省の川の水位は下がり続けているが、街にたまった水が完全に引くのはまだ時間がかかるようだ。高台であればあと1週間ほどで水は引く見込みだが、低い場所やくぼ地ではさらに時間を要し、あと1カ月かかることも考えられるという。

被災地の実態が外部に漏れないよう、当局は情報封鎖を強めている。しかし、それでも時折ネットに流出した一部の動画は、被災民が現在も強いられている過酷な生活を記録している。

過酷な避難生活で「急死する村民」も

ある河北省の被災者(女性)によると、女性の住む村では、3000人以上の村民が20日以上も家に帰れていない。家は、もちろん浸水しているが、その状況確認もできず、復旧や後片付けが全くできないのだ。政府からの「最低限の保障金」で今はかろうじて生きているが、医療などは何の保障もないという。

「健康で、若い人であればこの状況を乗り切れるかもしれない。だが、最近では50代や60代の村民が相次いで急死しており、すでに4人が亡くなったという。亡くなった村民は、過去に基礎疾患はなかった。急死の原因は、家に帰れない過酷な生活環境と関係があるのではないか」と、この女性は考えている。

今ごろ、のこのこ現れた幹部たち

いっぽう、政府の役人の動きはというと、まるで話にならないほどの馬鹿馬鹿しさである。

洪水期間中は、どこかへ「集団失踪」していた地元政府の「お偉いさん」たちであった。ところが、洪水が引いた後になると、今まで消えていた面々がゾロっと現れて「被災地の視察ショー」の撮影に忙殺されているのだ。

もちろん「軍隊や地方政府が協力して、懸命に、街の復興に尽力している」という、お決まりのプロパガンダショーの撮影も盛んに行われている。

現在の当局の宣伝内容を見ていると、河北省の洪水を「過去」のこととして、強引にその歴史のページを閉じようとしているかのようだ。洪水は「降雨による自然災害だった」と、彼らは今も言っている。

ますます苦境に立たされる被災者

当局による「予告なしのダム放流」が引き起こした洪水によって、甚大な被害を受けた各地の被災者たちは、依然として苦境に立たされている。

被災者はスズメの涙ほどしかない「被災手当金」の公平な支給を求めて、政府に陳情したり、抗議したりするものの、返ってくるのは当局による冷酷な言葉と暴力だけである。

「天災」は洪水だけでなく、さまざまな災害として毎年のようにやってくる。しかし、中国の場合は、中国共産党が統治を続けている限り、その「天災」には「人禍(人災)」も加わるのだ。

まして今回の洪水は、全く人為的な、しかも事前通告なしのダム放水であったことから、完全な「人禍」と言ってよい。当局は、甚大な被害が出ることを知りながら、町や村を水没させたのである。

すべての災難の根源は、中国共産党にあると言ってよい。中共が存続する限り、中国人民の悪夢は続く。しかし天の怒りは、もはや極限に近づいている。歴史はまもなく「明確な結論」を出すだろう。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。
関連特集: 中国