欧米諸国がロシアによるウクライナ侵攻に対して制裁を続ける一方で、ロシア寄りの中国共産党(中共)は同国に対して経済的、軍事的支援を続け、今や決定的な影響力を握っている。
米連邦下院外交委員長、マイケル・マッコール氏(共和党・テキサス州)は1日、メディアの取材に対し「第二次世界大戦以降、欧州と太平洋地域に対するこれほどまでに大きな脅威を私は見たことがない」
「習近平とプーチンの協力は、自由社会に対する大きな脅威だ」と、中露間の協力に対して懸念を示した。
経済支援
ロシア中央銀行のデータによると、2022年2月~2023年3月の14か月間で、中国工商銀行(ICBC)、中国銀行(BOC)、中国建設銀行、中国農業銀行4社の対露合計投資額は、22億ドル(約3242億円)から97億ドル(約1兆4297億円)に膨れ上がり、中国のロシアの銀行セクターへのエクスポージャー(リスクにさらされている金融資産)は、この14か月で4倍に跳ね上がった。
現在欧米の銀行は、国内の規制当局や政治家からのロシア撤退の圧力が強く、加えて、国際的な制裁措置によってロシアでの業務が非常に難しくなっている。そうした中、中国系銀行がロシアで欧米の銀行に取って代わっている。
このような中共の対露援助は、軍事や技術分野にも及んでいる。
軍事支援とその目的
今年7月、米国の情報機関を統括する米国家情報長官は報告書で、中共はロシアに技術、装備援助を提供しており、ロシアの戦争努力において中国がますます中心的な役割を担うようになっていると指摘した。
報告書では、ロシア公式の税関データを解析した第三者機関の分析を引用し、今年3月の時点で、中共は少なくとも1200万ドル(約17億6860万円)相当のドローンおよび部品をロシアに輸出していたという。
また、中国の国有防衛産業が、制裁対象になっているロシアの国有防衛産業に対し、ナビゲーション装置、通信妨害装置、移動式レーダーシステム部品を含めた軍民両用(デュアルユース)関連製品を供給していると述べている。
ハワイ米太平洋軍統合情報センターの元作戦責任者、カール・シュスター氏はエポックタイムズの取材に対し、中共がロシアへドローンやその部品を供給するのは、彼らがロシアによる戦争継続を望んでおり、一石二鳥を狙っている証拠だと指摘した。
「中国をはじめとする多くの国は、この戦争を新戦術、新システムの実験場とみなしている。中共軍(PLA)など、各国はウクライナとロシア双方によるドローン使用、民間衛星の利用、ネットワーク、対ドローン戦術・兵器について研究を行っている」
中国による軍事物資の供給についてシュスター氏は、一方でロシアの戦争努力を維持しながら、同時に米国の注意とリソースをアジア、インド・太平洋地域から逸らすことができるとして「戦略的に、また外交的に、中露のパートナーシップを強化させるものだ」と主張した。
中共の提供する軍事技術は、ロシアが対ウクライナ戦争で成功する上できわめて重要で、例えば現代の戦争においてドローンは、「兵器および偵察用プラットフォームとして大変重要な存在」だという。
シュスター氏によれば、「敵の対空監視能力および軍隊の指揮能力を低下させる」通信妨害装置と「軍隊の作戦行動の正確性を高める」ナビゲーション装置によって戦闘部隊の連携は大幅に向上する。また精密兵器の運用にも高度なナビゲーションシステムを必要とする。
戦争を利用する中国共産党
米国家情報長官の報告書によると、2021年以来、中国のロシアに対する半導体輸出が急増しており、対ロシア制裁措置や輸出規制があるにも関わらず「数億ドル相当の米国製または米国ブランドの半導体がロシアに流れ込んでいる」という。
コアー分析研究所の創設者、アンダース・コアー氏は、中共によって米国の重要な装置がロシア軍の手に渡るのは容認できないことだと語る。
コアー氏は、米政府や同盟国に対して「中国へより強力な技術規制をかけるよう求めるべきだ」と述べ、中共の統治下にある香港やマカオも同様の規制が適用されるべきだとした。
一方、長年にわたる中国の対露支援を考えれば、中国の対ロシア装備援助は驚くことではないという。コアー氏は、中国が国連でのロシアに対する非難決議を棄権した理由について「実際には、中共はウクライナ侵攻を支持している」と説明する。
「中共は、ある地域で戦争が勃発すれば、他の地域が弱体化し、中共にとって地域的、ひいてはグローバルな覇権が達成しやすくなると考えている。それが彼らの長期的な野望だ」
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