北朝鮮が9月上旬、水中からの核攻撃が可能となる初の潜水艦の進水式を行ったと発表したが、アナリスト等の主張によると、これは焦燥感に駆られた金正恩総書記が自国の兵器能力を誇張した発言である可能性が高い。
北朝鮮の国営通信は、この潜水艦は水中から戦術核兵器を発射できると主張しているが、ミサイルの搭載数や発射可能数については明らかにしていない、とAP通信は報じている。 韓国の日刊新聞「朝鮮日報」が報じたところでは、専門家等は同艦の能力に関する主張に疑問を呈している。
同紙によると、同艦は比較的小型の潜水艦には不釣り合いな10基の発射管ハッチを備えているように見えることから、韓国軍の合同参謀本部はこの奇妙な設計に首を傾げている。 朝鮮日報によると、今回北朝鮮が発表した艦の6倍の規模がある米国海軍のオハイオ級原子力潜水艦は22基の発射管を搭載している。
同紙の取材に応じた同合同参謀本部は、北朝鮮の潜水艦の外観から考えると「正常に運転できないと判断している」と述べている。
同同合同参謀本部はまた声明を通して「欺瞞や誇示があると考えられる」とも発表している。
北朝鮮の潜水艦が作戦任務に耐え得るものかどうか、またこの孤立した国に同様の潜水艦を別途建造できる能力があるかどうかについても疑問が呈されている。
国営通信社が発表した記事や写真に基づくと、これは北朝鮮の金正恩総書記が2019年に建造を視察した潜水艦と同じ艦であると考えられる。 当時の専門家等は、同艦はロメオ型潜水艦の改造型である可能性が高いと見ていた。これはディーゼル・エレクトリック方式を採用したソ連時代の設計に基づき1957年から1961年にかけて建造された艦で、1970年代に北朝鮮が中国から取得している。
カーネギー国際平和基金(CEIP)の核政策プログラムを担当するアンキット・パンダ上級研究員はAP通信の取材に対して、「この潜水艦は大幅に改造されてはいるものの、1950年代のソ連の技術を搭載しているため固有の限界がある」としながらも、 北朝鮮の潜水艦開発により、同国と敵対するインド太平洋諸国にとって「課題の克服」が一層複雑化する可能性があると警告を発している。
近年、北朝鮮は国連安全保障理事会決議に違反して弾道ミサイル実験と核開発計画を強力に推進している。 国営通信社が伝えたところでは、2023年9月上旬、北朝鮮は「戦術核攻撃」訓練と称して、模擬核弾頭を搭載した巡航ミサイルを発射した。
最近では日米韓といった同志国が安保協力の強化に取り組んでおり、北朝鮮が潜水艦を発表する2週間ほど前には、メリーランド州に所在する米国大統領の保養地「キャンプ・デービッド」で歴史的な日米韓首脳会議が実施され、3か国の首脳が防衛・経済関係の深化、安保の推進、北朝鮮の脅威に対抗することを目的とした弾道ミサイル防衛協力の強化について合意したばかりである。
複数の報道によると、金総書記はまた、原子力潜水艦の建造目標にも言及している。 米国海軍の潜水艦はすべて原子力を搭載しており、 フランス、インド、中国、ロシア、英国もよりステルス性の高い潜水艦を運用している。 しかし、パンダ上級研究員がAP通信の取材に応じて述べたところでは、援助なしで北朝鮮が高度な艦船を製造できる可能性は低い。
北朝鮮では弾道ミサイル潜水艦1隻(8・24英雄艦)のみがミサイル発射に使用されてきたと考えられており、アナリスト等はこれを実験用の艦と見ているとAP通信は報じている。 同通信によると、北朝鮮が保有していると思われる70隻から90隻のディーゼル潜水艦はほとんどが老朽化しており、魚雷や機雷は発射できるものの、ミサイルを搭載することはできない。
アナリスト等は、北朝鮮が技術面でロシアを頼る可能性があることを指摘している。 2023年9月、ウラジーミル・プーチン露大統領は北朝鮮の高度な兵器能力開発に対する支援提供を匂わせたが、兵器技術に関するロシアの秘密主義は周知の事実であり、これまでも中国といった友好国に対してさえその機密情報を明かしていない。 AP通信が伝えたところでは、ウクライナに対する軍事侵攻でロシアが使用する兵器を北朝鮮が生産することになれば、プーチン大統領は限られた兵器に関する機密を否応なく北朝鮮に提供する可能性はある。
金政権は貧しい国民を犠牲にしながら、国の限られた資源を継続的に兵器開発に費やしていると記者会見で北朝鮮を批判した韓国統一部報道官は、新型潜水艦の能力が如何なるものかに関わらず、今回の北朝鮮の動きを「嘆かわしいもの」と表現している。
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