深いところまで浸透する
影響力を確保するための中国共産党(中共)の戦術は、長年にわたってますます攻撃的に進化している。お金で攻勢をかけ、お金が通用しないところではスパイ活動とともに露骨な脅迫が登場する。
ある英国の議員は中国をめぐって批判的な発言をした。その後、その議員の子供は大学入学に苦労した。中国政府が大学に「支援金をすべて回収する」と脅したからだ。
中国系カナダ人議員のマイケル・チョン氏は、中国の弾圧に立ち向かってきた。昨年5月に公開されたカナダの情報機関文書によると、中国領事館は香港にいるチョン議員の家族に関する情報を収集し、チョン議員に制裁を加えるために、長年にわたりチョン議員と家族間の連絡を妨害し、家族を隔離した。
米国も状況はあまり変わらない。2007年から米国ユタ州では隔年で最大25人の州議会議員が定期的に中国を訪問している。
AP通信の報道によると、中国大使館は、習近平国家主席がユタ州の小学生たちの新年の挨拶に感謝する手紙を書いたと発表した。これに対し、ある議員は演説の席で「中国の指導者である習近平氏が時間を割いてこのような手紙を書いたという事実は驚くべきことだ」と発言した。
別のユタ州の議員は、パンデミック初期に中国との連帯を表明する決議案を提出した。この決議案は2020年に提出され、可決された。
先月、米上院情報委員会の公聴会で「中国政権が米国の政策結果を変えることに成功したと思うか」という質問に、米フーヴァー研究所のグレン・ティパート氏は「絶対にそうだ」と答えた。ティパート氏は、中国が経済的インセンティブを通じて米国企業をうまく操縦していると指摘した。
これと関連し、昨年7月、米国半導体産業協会の貿易グループはバイデン政権に「中国に対する追加的な半導体輸出規制措置を控えてほしい」という意見を伝えたことがある。
ティパート氏は「中国は直接出る必要はない。米国企業が利益を追求する方向自体が(中国の利益がある)方向を指しているからだ」と指摘した。
インセンティブの形態は様々だ。例えば、メリーランド州ロックビル市が台湾の宜蘭市と姉妹都市協定を推進すると、中国の外交官はロックビル市と中国南東部の嘉興市との非公式な関係を挙げ、投資機会を提示した。台湾との計画を廃棄するよう圧力をかけたのだ。
また、ティパート氏はこの事例も挙げ「中国とのパートナーシップは、中国が米国の政策に対する影響力を行使できる方法の一つになっている」と診断した。
では、インセンティブなどの微妙な手段が通用しない場合はどうだろうか。この場合、中国は露骨に侵略することを躊躇しない。
2020年10月、オセアニアの島国フィジー共和国で台湾主催のイベントが開催された。しかし中国当局者2人が現場を訪れ、訪問者の写真を撮影し、台湾の外交官1人に暴行を加えた。台湾外交官は頭を負傷し、病院に入院しなければならなかった。
精巧なネットワーク
欧米諸国は民主主義、つまり選挙を通じて絶えず更新する過程を経る。
ジュノ・カツヤ元局長は「私たちは絶えず支持と票を求めるている」とし「中国はこれをよく理解しており、選出された欧米の役人が(選挙票のために)中国の要求を聞くように誘導する戦略を立てる」と分析した。
このような影響力は、2021年のカナダの選挙で見事に表れた。世論調査で保守党が優位に立つ中、カナダの中国人コミュニティに浸透した中国政府は、保守党候補の信用を落とす誹謗中傷キャンペーンを展開した。専門家は、それによりケニー・チウ氏のようなタカ派候補が落選したと見ている。
チウ元議員はエポックタイムズの姉妹メディアNTDとのインタビューで「中共は非常に賢く、多くのディアスポラ(仕事、教育などの面でより良い生活を求めるために一定期間他の国に住んでいる市民または居住者)コミュニティに浸透するために非常に精巧なネットワークを備えている」と発言した。
中国の人口が膨大である点も中国にもう一つの利点として作用する。
2020年まで、全世界に約6千万人の華僑が分布している。そして毎年数十万人の中国人学生が海外に留学している。ジュノ・カツヤ元局長は「このように多くの人口が中国の情報戦線組織の継続的な監視を受けており、これは事実上、中国政権の意図を増幅する道具になっている」と話した。
全方位的な浸透
数年前まで、世界に向けての中国の浸透はほとんど陰に隠れていた。
昨年10月、34年間米国議会で働いていたあるスケジュール担当者が、議会事務所と中国大使館関係者との会談を手配しようとした疑いで解雇された。
また、最近の海外メディアの報道によると、中国国家安全部は、人材紹介プラットフォーム「LinkedIn」を通じて数千人の英国公務員に英国の国家機密と引き換えに現金などのインセンティブを提供した。実際、昨年3月、英国警察は中国政権のためにスパイ活動をした疑いで男性1人を逮捕した。
中国で留学生活をしたこの男性は、英国議会所属の研究員で、保守党の役付きの議員などとつながりを作り、英国の対中政策の策定を手伝ったとされる。英国保守党も英国の防諜機関MI5が中国政権ネットワークにつながりを持った2人の予備議員を把握した。その後、彼らの議員職は剥奪された。
カナダでは今年上半期にかけて350人以上の証人が中国の浸透問題を調査する委員会に出席し、中国の対外干渉の事実を証言した。ジュノ・カツヤ元局長は「これは中国がカナダのすべての政治階層に浸透したことを証明する別の指標」と表現した。
これに対し、米下院の「米国と中国共産党の戦略的競争に関する特別委員会」(米中戦略競争特別委員会)のマイク・ギャラガー委員長は、「米議会議員と職員全員が中国のターゲットであると想定するのが合理的だ」と警告した。
ギャラガー委員長はエポックタイムズに「中国の政治干渉は全般にわたって起きていると思う」という立場を明らかにした。
「人々は中国のスパイ活動の規模と範囲を正しく理解していない。(例えば)中国の資本の影響を大きく受けるハリウッドは、中国の浸透問題を直視する映画を作らない。私たちは真実を認識する必要がある」
「怪物」に対応する方法
アシュリー・ヒンソン議員が中国大使館の脅迫を無視して蔡英文台湾総統と会談を行った後、中国大使館側はヒンソン議員に特に連絡を取らなかった。
ヒンソン議員は「中国は私が屈服しないという事実を知っているようだ」と推測した。
その上で「中国の政治干渉は米国内で生きており、我々は中共の影響力を恐れずに最善の政策を提示しなければならない」と繰り返し強調した。
ジュノ・カツヤ元局長は、中国の浸透を「ある意味、私たちより大きく、四方に触手を持つモンスターと戦うようなもの」と例えた。
「モンスターと戦うのは簡単なことではない。中国は強力で、巧妙で、どこにでもいる敵だ。中国はすでに数十年にわたって浸透してきた。しかし、欧米諸国が力を合わせれば、たとえ時間がかかっても勝つことができるだろう」
(完)
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