世界保健機関(WHO)は、飽和脂肪酸を含む動物性食品を控え、穀物や炭水化物を多く含む食生活を推奨している。しかし専門家は、こうした動きは栄養学というよりも政治学に基づいていると指摘する。
医学博士で研究者のケビン・バス氏はエポックタイムズの取材で、WHOのガイドラインを形作っているのは、人々の栄養ニーズだけではないようだと語った。
「一般的に赤身肉の摂取を減らし、地球の健康に関するそのような推奨事項を行う傾向にあると考える。この大部分を動かしているのは、イデオロギー的な傾向だ」
WHOの最新のガイドラインは「飽和脂肪酸を1日の摂取カロリーの10%以下にすると、LDLコレステロールや全死因死亡率が減少し、冠状動脈性心疾患のリスクが減少する可能性がある」と述べている。
WHOは7月17日にも、肉類の摂取を控え炭水化物を摂るよう呼びかけ「牛や羊などの肉や乳製品」に含まれるトランス脂肪酸を避けるようソーシャルメディアに発信した。
米国疾病予防管理センターによれば、心臓病は依然として深刻な問題であり「米国における男性、女性、そしてほとんどの人種・民族の死因のトップ」である。2021年には約69万5千人の米国人が心臓病で死亡し、死亡者数の約5人に1人を占めている。さらに、米国心臓協会の2023年の報告書によれば、20歳以上の米国人の約半数、約1億2200万人の成人が高血圧と診断されている。
しかし、動物性食品に含まれる飽和脂肪酸を心臓病と関連づける証拠の多くは弱く、場合によっては否定されている。反対に、一部の健康専門家は、砂糖と炭水化物が心臓病やさまざまな代謝性疾患の原因であると指摘している。
肉食が二酸化炭素排出量の増加に関係
WHOは10月12日のリリースで、食肉の消費は炭素排出量の増加につながり、天候の変化を引き起こしていると主張。
「熱波、山火事、洪水、熱帯暴風雨、ハリケーンによる人道的緊急事態に直接的に影響を与えており、それらは規模、頻度、強度を増している」と述べた。
リリースは続けて「36億人がすでに気候変動の影響を受けやすい地域に住んでいる。2030年から2050年の間に、気候変動は栄養不足、マラリア、下痢、熱ストレスだけで、年間約25万人の死者を出すと予想されている」と強調した。
さらに、WHOと少なくとも1つの業界リーダーとの間には、いくつかの利益相反があるようだ。WHOのウェブサイトによると、2019年だけでビル&メリンダ・ゲイツ財団はWHOの総収入の9.8%を提供している。代替肉大手のインポッシブル・フーズの起業を共同で立ち上げたゲイツ氏は、人工牛肉は気候変動に対処するために必要な戦略だと主張している。
2021年2月、ゲイツ氏は『Technology Review』誌にこう語った。
「すべての豊かな国は100%人工牛肉に移行すべきだと思う。味の違いには慣れるし、時間が経てばさらに美味しく感じるようになるだろう」
バス氏によれば、赤身肉の大量摂取が健康に悪影響を及ぼすという科学的根拠は存在するが、WHOは食肉に対する主張を誇張しすぎており、気候変動に関連する政策の影響が、科学的根拠を歪めていると指摘した。
「環境的、政治的観点から、赤身肉の摂取を減らそうとしている。そして、科学的根拠が特に強いわけでもなく、赤身肉の摂取を減らすことの臨床的利益が特に強固なものであるわけでもないのに、このような勧告を是非とも強く打ち出すべきだ、ということになっているのだ」
「赤身肉を炭水化物や低品質の他の食品に置き換えた場合、赤身肉だけを食べた場合よりも悪い結果をもたらす可能性もある」
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