経済の急激な落ち込みが続く中国では今、北京市、四川省など各地の国有企業で、大量の人員が削減されている。
中国における「国有企業」とは、概ね中国の中央政府および地方政府が投資設立した企業のことを指す。この国有企業のうち、国が全額出資した企業を「国営企業」と呼ぶ場合もある。
いずれにしても、国有企業の経営は、中共政府の意思と利益にもとづいて決定される。
そうした「中共の国有企業」で現在、大量の人員削減が行われている。本来は「禁じ手」であるはずの「労働者の首切り」を、中国共産党の企業が公然と行っているのだ。
こうした事象は、もはや遠くない将来、中国経済が「多臓器不全」によって機能停止することへの顕著な前兆と見ることもできる。
北京の国有企業の従業員で、人員削減により現在は解雇された李さんは16日、NTD新唐人テレビの取材に応じて、次のように話した。
「中国経済が不況であるため、今は各地の多くの国有企業や中央企業(中央政府の管理監督を受ける企業)で従業員を大幅に解雇している。私が以前働いていた国有企業は、政府に軍備設備などを提供する大きな工場だったが、すでに6割以上の従業員が解雇された。解雇される対象者には、大した補償もない。再就職できなければ、生活が非常に苦しくなる」
また、NTDの取材に応じた四川省自貢市の民間企業経営者・鐘さんは、次のように語る。
「自貢市はもとは工業都市で、井塩(せいえん、塩分をふくむ地下水から作る食塩)の生産が盛んだった。しかし過剰な地下水採取により、資源が枯渇してしまった。そこへ3年間続いたパンデミックにより、現地の工業は完全に終わってしまった。いまや多くの企業が廃業に追い込まれるか、他の場所への移転を余儀なくされている。国有企業に勤めていた多くの労働者が、職を失った」
「国有企業の大きな製塩工場では、5万人が職を失った。解雇者には、会社から少しばかりの生活費が支給されるのみだ。良いところで1千元(約2万円)ほどだが、経営状況が悪い企業では400~500元(約8千~1万円)しかもらえない」
「たとえ解雇されず、無事に60歳の定年を迎えた場合でも、定年退職者に毎月支払われる手当(中国では、年金以外に退職後手当てがつく)は、もとの賃金の60%。約2千元(約4万円)ほどで、やはり生活が苦しい。そのため60歳、70歳になっても、守衛など何らかのアルバイトをする高齢者も多い」
内モンゴルの国有企業(軍工企業)で働く劉さん(女性)の場合「私たちの国有企業の工場では、賃金が非常に少ない。月給3千元(約6.2万円)ほどしかない」という。
「今の給料は、ぎりぎり生活できるだけだ。病院に行ったり、ましてや家を買う余裕などはない。病院に行きたければ(そのお金を貯めるため)毎日漬け物とお粥の生活をするしかない」
劉さんは「企業からの保障などは皆無。みんな歯を食いしばって、その日を暮らしている」と嘆く。
中国では、国営企業や中央企業であっても、タバコや石油、通信関係などの独占業種を除けば、賃金は総じて高くない。
これに追い打ちをかけるように、各地では昨年から、3か月前倒しで「旧正月休み」の長期休暇に入った工場も少なくない。
その理由は「受注がなく、多くの在庫を抱えているため」である。受注がない以上、工場の機械を稼働させることができない。さらに悪化すれば、従業員を解雇する「人べらし」しかなくなるのだ。
解雇によって、たとえ一時期はしのいだとしても、企業としての「死期」は確実に近づくことになる。
出口の全く見えない苦しい現状が、どの生産現場にもある。ちなみに2024年、旧正月の元旦は2月10日である。
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