南太平洋の島国ナウルは15日、それまでの中華民国(台湾)との外交関係を断ち、中国と国交を結ぶと突然発表した。これにより、台湾と公式な外交関係を持つ国は現在、12か国になった。
台湾外交部の高官は「ナウル政府は先週末、新たな台湾総統に選出された頼清徳氏の勝利を祝福していた」として、今回のナウルによる断交は「極めて唐突だ」と非難した。
「経済支援」は釣り針についたエサ
台湾外交部の同高官によると「中国の当局者がナウルの政治家に対し、経済支援をちらつかせて言い寄っていた、とする情報がある」という。
近年、中国共産党は台湾を弱体化させるために、台湾と国交をもつ友好国の切り崩しを行っている。中共は、多額の経済援助などを交換条件にして、関係国に台湾との国交を断たせるとともに、中国との国交締結を迫るのだ。
加えて、南太平洋の赤道直下に位置するナウル共和国は、人口1.1万人ほどの小さな島国である。この少ない人口の国に、中国製品が大量に売れるわけではない。だとすれば、台湾からの離反を画策すること以外に、中共が「ナウルを欲しがる理由」は何であるか。
中共が虎視眈々と狙うのは、ナウルの「海」をふくむ、太平洋への海洋進出に資する「足がかり」であろう。
その前例として、2019年から明確に「親中」に傾いた南太平洋の国、ソロモン諸島がある。同年9月、ソロモン諸島は台湾と断交し、中共の中国と国交を樹立した。広い太平洋の上ではあるが、ナウルは、地理的にソロモン諸島の「隣国」である。
エサは釣り針についている、という当たり前の危険を、果たしてナウル政府はどれほど認識しているのか。ただ、時すでに遅く、ナウルは台湾と断交し、中共の中国と新たに国交を結んでしまった。
ナウルの台湾に対する断交決定を受けて、米国の対台湾窓口機関・米国在台協会(AIT)の理事長ローラ・ローゼンバーガー(Laura Rosenberger)氏は16日「ナウルに失望した」と表明した。
またローゼンバーガー氏は「中国共産党が、また台湾と国交をもつ国を(中国側に)引き込んだ。中国は、しばしば国交締結と引き換えに(経済援助などの)約束をする。しかしその約束は、最終的には果たされない」と非難した。
ローラ・ローゼンバーガー氏は「台湾の民主主義と繁栄」を賞賛するとともに、今後も引き続き「米台関係を深めていくこと」を約束した。
中共は「約束を守らない」のが常
中共の中国が「約束を守らない」のは、昔からのことである。
その中共に騙された事例は数多いが、最近の例を挙げるとすれば、昨年3月に長年にわたる台湾との国交関係を断絶して、代わりに中国との国交を樹立した中米ホンジュラスがある。
台湾との断交から10か月経ったいま、ホンジュラスの経済を支える主力の1つであるエビ養殖の関連産業は崩壊の危機に瀕している。
ホンジュラスが、国内産エビの新たな輸出先として期待した中国には、中国側があまりにも安値で買い叩こうとするため、全く市場が開拓できていない。
それまでの輸出先であった台湾に再びエビを売ろうとしても、すでに国交を解消した後なので優遇措置がなくなり、関税が20%引き上げられてしまった。
そのためホンジュラスは今、重要な輸出品であるエビの産業が壊滅的打撃を受けるなど、大きな経済損失を受けている。ホンジュラス国内のエビ養殖場は、すでに多くがつぶれたという。
被害を受けた第一の原因は「中共が約束を守らない」からである。しかし、そうした中共の狡猾な言葉を信じてしまったところに、自国の重大な過失があることにも気づかなければならない。要は、絶対に中共を信じてはならないのだ。
ホンジュラスは、国産エビの新たな市場を拓くため、韓国も視野に入れている。しかし韓国は、台湾の同盟国であることから「購入をしぶる可能性が非常に高い」とみられている。
ホンジュラス全国養殖協会(Andah)の責任者は「我々は全てを失った」と嘆いている。
関連記事
台湾との断交から10カ月 ホンジュラスのエビ産業は崩壊の危機 「中国に騙された」(こちらをクリック)
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。