時は乱世「資産には黄金を持て?」 にわかに巻き起こる金(ゴールド)ブーム=中国

2024/02/23 更新: 2024/02/26

政情や国内通貨が「不安定な時期」に、(きん)は 魅力的な資産になるとされている。中国でも古くから「盛世には骨董を収集し、乱世には黄金を買う」と言われている。

そうは言うものの、中国各地では今、やや唐突な感を伴いながら「金(きん)買い」のゴールドブームが巻き起こっている。

まさに先月末から始まり、今年の旧正月の期間中にブレークしたこのブームは、正常に機能する経済の動向というよりは、人々が不安と危機感にさいなまれた末の「奇怪な現象」と見たほうがよい。

なぜならば、いま金を保有することが「安全な投資である」とは、誰も保証できないからだ。消費低迷が続く中国で、今回の金買いブームが何者かによって意図的に火付けされたとすれば、金投資という落とし穴への危険性は増大する。しかし今のところ、その背景は明らかになっていない。

いずれにしても、中共統治下の中国において、中共の操作が及ばない「自由な市場」など存在しないことは念頭に置くべきであろう。

かつて、90年代に中国が不動産ブームに沸いた頃は、まったく建物ができていない「完成予想図」の段階から、目を血走らせた中国人が資金をかき集め、先を争ってマンションなど不動産の「先物買い」に狂奔した。

そうした一般投資家の多くは、自身の居住用にではなく「将来、高値で売れる」と踏んだからである。しかしその末路は今、どうなっているか。建設が止まったままの幽霊マンションが林立する、中国特有の恐るべき光景になっているのだ。

このたび突然わいた「金買いブーム」も、先を争う購入者の心理としてはそれに類似する部分もあるかもしれない。しかし、中国人をとりまく状況は、30年前の不動産バブルの頃とは全く異なっている。

その底流にあるのは「金儲け」ではなく、もはや経済破綻が明らかな中国における人々の「膨張する不安感」である。

中国人の「金買い」について宝飾店のスタッフによると、ブームになる以前は「40~50代の女性」が主な客層だった。ところが今は、30代前半から20代の若者が多く「金買い」の列に加わっているという。

中国メディアによると、この「金買いブーム」は1月末からはじまり、今も続いている。このごろ、北京や上海をはじめ、山東省など各地の宝飾店では、金アクセサリーの在庫切れが相次いでいるという。

金塊はもちろん、今年の干支にちなんだ龍や伝統的なデザインの金アクセサリーが人気のアイテムだが、若者には比較的安価な、小さくてデザインが目新しい金のアクセサリーが大人気だという。

店舗での現物販売のみならず、オンライン販売も非常にホットで、ネット販売プラットフォームのデータによると、1月以降、辰年に合わせた龍の金アクセサリーの人気度は、前年より500%以上増えているという。

広東省広州市で金のジュエリー加工工場を経営する李さんは、今月16日にエポックタイムズの取材に応じて、次のように明かした。

「うちの工場では、30人余りの従業員を抱えているが、旧正月の前からみんな残業が続いている。毎日百個以上の、オーダーメイドのゴールドジュエリーを加工している」

中国黄金協会の統計によると、昨年に中国で消費された黄金(ゴールド)の量は1089.69トンで、前年同期比より8.78%増えている。

また、世界黄金協会(World Gold Council)が1月31日に発表した報告書によると、昨年の黄金需要量は過去最高の4899トンだという。

中国経済が衰退する一方で、中央銀行の金の保有量は過去最高に達している。

現在の金ブームについて、米国在住の政治・経済アナリストの陸遠行氏は、以下のように分析する。

「さまざまな地政学的衝突や戦争、さらには潜在的な戦争への脅威などで現在、世界の情勢は混乱状態にある。そのため昨年は、世界的に金の需要が高まった。中国では、なおさらそうだ。中国の昨年の経済は、惨憺たるものだった。ほとんど全ての産業が不景気で、不動産業界も株式市場もみな崩壊している。そんな背景もあって、中国人は金(きん)に目を向けている」

「金を買うなら金塊が一番だろう。金のアクセサリーや装飾品は、売る際にデザイン料や加工料などを差し引かれる。いざ売ろうとすれば、購入価格と販売価格の差が非常に大きくなるため、金投資においては最悪の選択だ」

「しかし、中国における多くの投資ルートは、中国共産党によってコントロールされている。金への投資においても、今後は何が起きてもおかしくない。それでも資産保全を望むならば、米ドルを保有する(米ドルは中共政府による厳格な規制あり)か、黄金を買うかの2つしかない」

「ともかく、中国人にアドバイスするとしたら、国外へ逃げられる人はとにかく逃げる。逃げられないならば、資産を米ドルや金塊に換えることだ。今年の情勢は、さらに悪くなる。不動産や株式市場へは、何があっても投資してはならない」

中国の通貨である元(げん)の価値が暴落すれば、中国国内は阿鼻叫喚の地獄となる。そうなる前の「守り」として今回の金買いブームであるが、果たしてそれが奏功するか否かは、全く不明である。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。
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