2024年3月7日、ジョー・バイデン大統領は、連邦議会での一般教書演説において、民主主義を脅かす力に対抗する砦として自身を位置づけ、自らの政策が再選に相応しいものであること、及び81歳の高齢にも関わらず米国合衆国大統領としての職務を全うする能力があることを強調した。
この2024年の総選挙を前にした最後の一般教書演説では、バイデン氏はトランプ氏の名前を直接挙げることはなかったが、自身を繰り返しトランプ氏と比較した。
一部の有権者がバイデン氏の年齢を問題視する中、彼は演説を通じて自身のエネルギッシュな姿勢を際立たせ、声を張り、演説を妨害しようとする共和党員との間で激しい応酬を展開した。
バイデン氏は名前を出さずに、トランプ氏を猛烈に批判した
演説の中では、バイデン氏はトランプ氏の名を出すことはなかったが、その存在を演説全体に渡って暗示していた。
特に、2021年1月6日の議会議事堂侵入事件の暴徒に対する強い非難から始められた。「私の前任者(トランプ氏)とその場にいた一部の人々が、1月6日の出来事の真実を隠蔽しようとした」と指摘した。
「勝利した時だけ国を愛することはできない」とバイデン大統領は言及し、「民主主義は、米国の南北戦争以来最大の脅威に直面している」と述べた。
また以前、トランプ氏がNATO加盟国に国防費の増額を求めなければ、ロシアのプーチン大統領が自由に行動できると警告したことを批判した。
「私の前任者である前共和党大統領がプーチンに『好きにして良い』と言ったことには、激怒し、危険を感じ、受け入れがたい」とバイデン氏は強調した。
さらに、バイデン氏は、中絶権や経済問題におけるトランプ氏との対称を強調し、即興のジョークを交えて共和党議員を風刺した。これは彼の年齢や精神の鈍さに対する人々の懸念を軽減するためのようであった。
バイデン大統領は、自らの外交政策を国際主義の視点で位置づけ、「前任者」のトランプ氏の孤立主義と対比させた。
一方、バイデン氏の演説と同時に、トランプ氏は自身の「Truth Social」プラットフォームで、バイデン大統領を批判する数多くのメッセージを発信した。
トランプ氏は以下のようにコメントしている
「彼が話すとき、彼は非常に怒っているように見える。これは『理性を失った』人の兆候だ」
「怒りと叫び声は、私たちの国を再結束させるには何の役にも立たない!」
またNATOとプーチン氏に関する発言への論争について、トランプ氏は、以前の大統領の下ではNATOが財政的に苦労しており、自身の政策がNATOに対する加盟国の財政的貢献を増やすことに成功し、自分の方針がNATOに改善をもたらしたとバイデン氏の主張に反駁している。
またプーチン氏については「プーチンがウクライナに侵攻したのは、彼がバイデンを尊重していなかったからだ」と述べ、「トランプ政権下では(ウクライナ侵攻は)決して起こらなかった。4年間、それは起こらなかった!」と主張した。
年齢に関する問題について
81歳であるバイデン氏が自らの年齢及びそれが大統領としての資質に与える影響については物議を醸している。
バイデン氏は年齢について質問された際、自身の年齢を一つの強みとして位置付けようとしていた。
バイデン氏は自身の年齢を前面に出し、自分が第二次世界大戦の時代に生を受けたことを引き合いに出すことで、自らを米国の価値観の象徴であると位置づけた。
ある夜、バイデン氏は活気に満ち、力強い演説を実施し、時には共和党の人々を即座に風刺することもあった。
共和党が国境のセキュリティに関する法案への支持を疑問視したとき、彼は「事実を見てください。あなた方は読む能力があるはずです」と訴えた。
演説中、言葉に詰まる場面も見受けられたが、他の演説と比較して、この時の彼のパフォーマンスはより活力に満ちていた。以前の演説では、彼の発言が不明瞭で聞き取りにくいことがあった。
また、バイデン氏は29歳で初めて上院議員に選ばれた際に「若すぎる」と言われたことを振り返り、冗談めかして、当時は若すぎたため、上院の一部のメンバーが彼とエレベーターを共に使うことさえ拒んだと語った。
自身の年齢についてバイデン氏は以下のように語っている。
「私は年を取り過ぎていると言われています。若かった頃も、歳を重ねた今も、私は常に何が不変であるかを理解していました」
「米国の理念とは、私たちが生まれながらにして平等であり、一生涯平等に扱われるべきだというものです。私たちはこの理念を常に完璧に実践してきたわけではありませんが、決してそれを放棄したことはありません」
彼はこの思想を未来への「ビジョン」として提示し、再選されることがあれば、そのビジョンを具現化する意向を示した。
「米国の同胞の皆さん、私たちの国が直面している問題は私たちの年齢ではありません。問題は、私たちの考え方がどれほど古いかです。憎悪、怒り、復讐、報復は最も古い考え方です。しかし、これらの古い考え方で米国を導くことはできません。それは私たちを後退させるだけです」
またバイデン氏は「可能性に満ちたこの国、米国を導くには、未来へのビジョンが必要であり、何を成し遂げるべきか、何が達成できるかを知る必要があります」と続けた。
経済成果の強調
バイデン氏は一般教書演説において、基礎インフラへの投資や「チップと科学法案」を含む、自らの経済政策を以下のように述べた。
「私の指導の下、米国の道路、橋、高速道路などの連邦プロジェクトにおいては、米国製の製品を使用し、米国の労働者が建設を行い、米国における高給の職業を創出します」
「パンデミック期間中には、半導体チップの不足がスマートフォンから自動車に至るまで、様々な製品の価格上昇を引き起こしました」
バイデン氏は、現在半導体チップの米国内での生産が始まっていることを明らかにし、「これは数万の雇用機会を創出し、その多くが年収10万ドル(約1470万円)を超えるものであり、大学の学位を要求しません」と語った。
彼はさらに、「全体として、私の政策は企業によるクリーンエネルギーや先端製造業への6500億ドル(95兆6120億円)の投資を促し、米国内で数万の雇用機会を創出しました」と付け加えた。
しかし、バイデン氏が自身の経済成果を賞賛する際に、「現在の米国のインフレ率は『世界で最も低い』」と誤って主張したことがあった。
「賃金の上昇が続き、インフレは減少傾向にあります」とバイデン氏は述べ、「インフレ率は9%から3%に下がり、これは世界で最も低い!そして下降傾向にあります」と述べた。
以前にもバイデン氏は同様の主張をしたことがあるが、これは正確ではなかった。
実際、米国の年間インフレ率は3.1%で、それに対して、カナダの年間インフレ率は2.9%、ユーロ圏の消費者物価指数は2.6%、日本のインフレ率は2.2%であり、中国はデフレを経験しており、年間インフレ率はマイナス0.8%となっている。
ガザ紛争の転機について
またバイデン氏は、世界が注目するイスラエルとテロ組織ハマスとの間の最新の衝突についても言及した。
10月7日にハマスがユダヤ人に対して行った大虐殺以来、最大の一日の殺害行動を強く非難し、ハマスが全ての人質を解放するまで休息をとらないことを誓約した。
バイデン氏は以下のように述べた。
「イスラエルにはハマスを追撃する権利がある。ハマスは本日中に人質を解放し、武器を置き、10月7日の事件に責任がある人物を引き渡すことによって、この紛争を終結させることができる」
「ハマスが民間人の中に隠れて活動しているため、イスラエルの責任は一層重大になっている。しかし、イスラエルにはガザの無実の民間人を保護する根本的な義務がある」
バイデン氏は、今回の戦争がガザの無実の民間人に与えた損害が、過去のガザ戦争の総計を超えていることに触れ、政権が6週間の停戦を求めており、人質の解放と人道主義的援助がガザへ流れ込むことを可能にすると語った。
また米軍がガザ沖で一時的な桟橋を建設することを支援する計画を発表し、この取り組みがガザ地区への援助物資の流入を大幅に促進するだろうと述べた。
米国は台頭している
またバイデン氏は、共和党員や多くの他の人々が中国(中共)が台頭し、米国が衰退していると主張していることに対して、それは誤りであると述べた。
バイデン氏は、米国の国内総生産(GDP)が成長し続けており、米国の中国に対する貿易赤字は10年間で最も低くなったとし、米国の経済の優位性を訴えた。
また自身の政権が中国(中共)の不公正な経済行為に反対し、太平洋地域でのパートナーシップと同盟を再構築し、中共が米国の先端技術を使用することを阻止したことを強調した。
「率直に言って、私の前任者は中国(中華人民共和国)に対して多くの強い言葉を使っていたが、実際に行動を起こすことはなかった」
「私たちは中国(中共)との競争を望んでいるが、衝突は望んでいない」とバイデン氏は明言している。
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