広東省広州市の路上で今月12日午前9時ごろ(現地時間)、暴走車が歩行者やバイクなど次々とはねるという、事故ではない「事件」が起きた。
車を運転していた黄(男、49歳)は現場から逃走を図ったが、現地警察に拘束されている。
現地当局によると、負傷者は11人。現在、動機などを詳しく調べているという。
SNSに投稿された現場映像のなかには、道端に倒れるバイクや市民の姿があった。暴走車は最終的に大型バスにぶつかって、近くで停車。フロント部分は大破している。
中国のSNSでは、「またか」「これも社会への復讐か?」という、何とも言えない嘆きが広がっている。
「もう怖くて、町を歩けない」
「こんなことが続くなんて、もう都会には住めない。田舎に帰る」
「大破した自動車のフロントを見れば、どれだけスピードが出ていたか想像できる」
「前回の天河の事件から、まだ日が浅いだろう」
「政府当局は、何か打つ手はないのか?」
「今後も、このような社会報復事件が増えるだけだ」
ネットユーザーが言及した「天河の事件」とは、2023年1月に同じ広州市の繁華街の交差点(天河路)で起きた、暴走車が人の流れに突っ込み、通行人や自転車などを次々とはねた「社会報復事件」だ。市の警察当局は「死者5人、負傷者13人」というこの悲惨な事件を、なぜか事件ではなく「交通事故」として発表している。
「前回」とも言える「天河の事件」の現場は、付近に日系企業のオフィスが入ったビルが立ち並び、日本人が多く住む場所でもあった。
当時の目撃者によると、車は混雑した道路を往復するなどして700メートル以上にわたって暴走していた。また、ネットに投稿された現場動画には、はねられた多くの人々がぐったりと倒れている様子や、運転していた男が車を降り、紙幣(100元)らしきものをばらまいている様子なども映っていた。
その時、逮捕現場の動画によると、地面に押さえつけられた男(22歳)は「我々は仲間だ。Sir(警察官への敬称か?)私は以前は善良な人だった。新しく就任した黄坤明は私のおじだ…私は濡れ衣を着せられたんだよ…死ぬわけにはいかない」などと、不可解なことを叫んでいた。
1年2か月前のこの事件について、自身のセルフメディア番組で解説している時事評論家の唐靖遠氏は「中国で社会報復事件が多発する理由」について、次のように指摘している。
「中国共産党の体制下、学校で行われる紅色教育のなかで『自分が幸せに生きられないなら、他人も不幸に陥れてやる』といった極端な利己主義の考えが蔓延した。そのため、人格や精神に欠陥のある人間が、大勢作り出されてしまったからだ」
今回の暴走車事件について、その動機や背景などは明らかでない。ただ、多くの市民が「またか」と思い、肩を落としていることは間違いない。
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