孤立深める中共 ビザ緩和策打ち出すも外国人は敬遠ぎみ

2024/03/18 更新: 2024/03/19

新型コロナウイルスのパンデミックが続いた3年間、中国共産党(中共)による「ゼロコロナ」政策の実施により、中国は国際社会からの孤立を深めた。

2023年7月から、中共はフランスやドイツなど15か国に対する観光ビザの制約を解除し、さらに、中国に住む外国人に対する税制上の優遇措置も拡大された。

また李強首相は全国人民代表大会の中で、外資の誘致強化を「約束」した。これらの措置は、安全を経済よりも優先する党首の方針による孤立を克服しようとする中共の試みの一部である。

しかし、「反スパイ法」の改正や国家による反スパイ活動の強化、民間によるスパイ摘発の促進、外国の調査会社への圧力、外資系企業の幹部に対する恣意的な拘束や出国制限など、米中間の地政学的緊張が高まり、多くの外国人が中国との接触を躊躇している。中共政府への不信感は消えない。

外国企業の幹部や西側の外交官らは「信頼の回復は困難」と述べ、外国人の中国への関心は次第に薄れている。

外国企業幹部も訪中に無関心

「ウォール・ストリート・ジャーナル」の3月17日の報道によると、2023年、北京で米企業の幹部宅を警察が訪れ、パスポートの確認と雇用状況を調査した。その上、その様子をスマートフォンで撮影する事件が発生し、幹部を深い不安に陥れた。中共の官僚は、この突然の訪問の理由について説明していない。

中国国家移民管理局の統計によれば、昨年中共が外国人に発行した居住許可は71万1千枚で、これはパンデミック前の2019年と比べて15%の減少している。ビジネス旅行者を含む短期滞在者の数はさらに顕著に減少しており、同期間における減少率の3分の2に達している。

公式データによると、2022年の上海で外国人労働者に新規発行された滞在許可証は、2020年の約7万枚から5万枚に減少した。欧州商会上海支部の報告によれば、2022年3月の上海ロックダウンの後、ドイツ人の25%が上海を去り、フランス人とイタリア人の減少率もそれぞれ20%に達した。

中国の航空会社は、現在の週35便の米中間フライトを3月末までに週50便に増やす計画であるが、「ウォール・ストリート・ジャーナル」の報道によると、外交官やビジネスコンサルタントらは、フライト数を増加しても、外国人の中国への関心に根本的な変化は見込めないと指摘しているという。

家庭を持ちキャリアアップを望む外国人にとって、中国に固執する必要はもはや無く、現在では、東南アジア、インド、中東が新しい目的地として浮上している。これは、上海でサプライチェーンコンサルティングを手掛けるカメロン・ジョンソン氏が述べたことである。

法律事務所の公共政策部門のシニアアドバイザーであるショーン・スタイン氏は、かつては外国企業の幹部たちが積極的に中国に足を運んでいたものの、現在では「中国に行く利点が見出せない」という意見が増えていると指摘している。

外国の企業は、中国に対する投資のリスクを感じ始めている。中共の商務部は、今年1月に昨年の中国への外国からの投資が8%減少し、約1570億ドル(約23兆4225億円)になったことを発表した。

これは過去10年間で初の下落である。さらに、3月17日のCNBCの報道によると、米国のTikTokに関する立法を例に挙げると、選挙年においては中国への投資がリスクを伴うとされている。

3月上旬に開催された中共の全国人民代表大会では、貿易の促進と外国からのさらなる投資を引き寄せることが重要な任務として挙げられた。

3月14日には、米国の駐中国大使であるニコラス・バーンズ氏がブルームバーグとのインタビューで、中国で事業を展開する米国企業が投資の拡大に躊躇している状況について語り、中共の発信するメッセージには矛盾があると指摘した。

バーンズ氏は昨年、中共による米国の企業への不意打ちの捜査や、新設された広範囲にわたる反スパイ法が、外資にとって障害となっていると指摘した。彼は、「現在、中国政府から発せられる国家安全に関する警告が、最も強く印象に残るものである」と述べた。

さらに、バーンズ氏は、中共による米国企業への急な襲撃が、通常の公開調査やデューデリジェンス(適正評価手続き)やコンサルティングといった業務の範囲を超えているとも指摘した。

「ウォール・ストリート・ジャーナル」によれば、ビジネスリーダーたちは、多国籍企業が中国に高官を派遣できない場合、中国のオフィスが本部との連携を欠くことになり、中国における自社の企業文化を維持することが難しくなるという懸念を示した。

専門家は、長期的には、外国人が共産主義国である中国への関心を失うことにより、中国と世界を繋ぐ人材が減少し、不信や誤解が深まると警告している。

先進国の滞在者が軒並み減少

中国に滞在または訪れる外国人の公式統計は不明だが、世界の主要な国々からの中国滞在者数が近年減少していることは、他のデータから明らかになっている。

韓国政府の統計によると、2023年、中国における最大の外国人コミュニティの一つである韓国コミュニティの登録人数が、2019年と比較して30%減少し、21万6千人になったことが示されている。また、同じ期間に中国で登録された日本人の数も13%減少し、10万2千人となった。

英国商工会議所による推計によれば、パンデミック前と比べて中国に住む英国人も半数以上減少し、約1万6千人となっている。

米国大使館の報道官は、中国に滞在する米国市民の数を追跡していないと述べている。しかし、パンデミック前と比較して、成人のパスポート更新の必要性(海外在住の米国市民数の指標の一つ)が著しく減少していることが明らかになっている。

さらに、パンデミック前に中国にいた1万人以上の米国人学生が、1千人未満にまで減少した。この減少の原因の一つとして、中共が米中学生交流をサポートする団体に圧力を加えていることが挙げられる。

中共は2016年に、中国で活動する外国のNGOに国家安全部の監督を義務付ける法律を施行した。米国国務省の職員は、中共による出国禁止や恣意的な拘留に対する懸念が、依然として多くの人々の注目を集めていると指摘している。

また、3月より米国国務省は、恣意的な拘留や中共の法律の恣意的適用のリスクを理由に、中国を「旅行の再考」リストに加えた。

夏雨
関連特集: オピニオン