「清明節(4月4日、祖先を供養する日)」期間中、かねてから各地の集合住宅地に存在し、物議を醸してきた「骨壺部屋」の話題が中国SNSのホットリサーチ入りした。
「骨壺部屋」とは墓地の代わりに作られた、都市の集合住宅の一室を改造した骨壺を置くための専用の部屋のことだ。
そのような部屋はいまや中国の各地に存在している。同じ集合住宅内に何部屋も「骨壺部屋」が存在するケースや、なかには集合住宅の階ごと、全ての部屋が「骨壺部屋」という事態も。
「うちのマンションは住んでる死人は生きている人より多い」とSNSで嘆く声も上がっており、「骨壺部屋」の現象の出現をめぐっては、物議を醸している。
中国メディア「法治日報」3日付は、各地に存在する「骨壺部屋」について伝えた。
例えば、中国江蘇省南通市にある集合住宅地のケース。「骨壺部屋」の向かいの部屋に引っ越してきた市民は、入居以来、隣人には一度も会ったことがないのだ。そこで「清明節」期間中、隣の部屋に客が訪れる際に自宅ドアの覗き穴からのぞいてみたら、向かいの部屋の中の様子が見え、「ようやく、お隣さんが生きた人間ではないことに気づいた」という。
また、昨年、山東省青島市の郊外の集合住宅で部屋を借りた李さんの場合、「なぜか家賃が相場より半額は安い」ことがどうにも腑に落ちなかったが、いざ引っ越していったらその理由が判明したという。
なんと、廊下挟んだ向こう側の3つの部屋の窓が赤レンガやセメントで隙間なく塞がれていたのだ。「これは何かおかしい」と不審に思った李さんは他の住民に事情について尋ねてようやく、これら部屋が「骨壺部屋」であることに気づいた。
現地の風習では、「骨壺は日光に当ててはいけない」ということになっているため、窓などをみっちり塞いぎ、遮光をしているという。
驚愕的な事実を知った李さんは、2日も経たないうちに他所へ引っ越すことした。「正直言って、あそこに住むのはちょっと、気味悪くてしょうがない」と李さんは振り返っている。
高騰する墓地の代わりに「骨壺部屋」を購入する市民
北京市民によると、「北京では市中心から離れた一般的な墓地であっても、価格は10万元(約210万円)以上もする。しかも、墓地使用期間は20年間しかなく、20年過ぎるとさらに墓地管理料などの費用がかかる。だからうちでは北京郊外で墓地を買う代わりに、北京市に隣接する河北省でちょうどいい面積のマンションの部屋を買ってそこに親族の骨壺を置いて、毎年お参りに行くんだ。」という。河北省のマンションの部屋は25万元(約524万円)で買えて70年も使用できるそうだ。
ネット上では「墓が高いなどの事情は理解できるが、死人と一緒に住むなんて、やはり無理だ」「全ては高すぎる墓地のせいだ」「墓地の価格がこのまま高騰し続けたら、骨壺部屋が常態化するだろう」など嘆きの声が広がっている。
「骨壺部屋」をめぐっては、2017年江蘇省南通市の集合住宅地で、部屋所有者たちが集団で抗議をする事件が発生している。
高騰する中国の墓場事情について、時事評論家の唐靖遠氏は、「近年、中国当局による過度な不動産投機の影響をうけて、各地地方政府は土地転売の収入を重要な財政収入源としたため、墓地の価格まで高騰した。その結果、生きている間は家を買えず、死んだ後も墓地も買えない人は本当に多い」と嘆く。
時事評論家の李林一氏は、「骨壺部屋が流行り出したのは2020年以降で、ちょうどパンデミック期間中と一致する。ウイルスに感染して亡くなった人があまりに多いため、墓地の価格が高騰したのではないか。その可能性は否定できない」と分析している。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。