米ニューヨーク市ではネズミの尿によって引き起こされるレプトスピラ症の感染者数が急増している。同市の保健・精神衛生局は12日、レプトスピラ症は重症化すると肝臓や腎臓の機能障害を起こし、死に至ることもある感染症だと述べ、注意を呼びかけた。
保健・精神衛生局によると、2023年にニューヨーク市内で報告された症例数は24件で、単年度では過去最多となった。2024年にはこれまでに6件の症例が報告されており、2001年から2020年までの年間平均症例数の2倍となっている。
レプトスピラ症はネズミが持つ細菌で、感染した尿や尿で汚染された水、土壌、食物が体の傷や粘膜に接触することで感染する。3日から2週間程度の潜伏期間を経たあと、高熱や頭痛、下痢などの症状が出る。
レプトスピラ症は洪水やハリケーンなどの自然災害時に汚染された土壌や水によって引き起こされることがあるが、ニューヨークでは直接ネズミの尿によって引き起こされることが大半だという。
感染者増加の原因は不明だが、ニューヨーク市保健局は過度の雨と季節外れの気温が関係している可能性があると指摘した。
国立感染症研究所によれば、日本では2016年1月から2022年10月末までに273例のレプトスピラ症の届出があり、少なくとも2人が命を落としている。
「ネズミの帝王」
ネズミが増加していることを受けて、ニューヨークでは昨年、駆除対策を率いる同市初のネズミ駆除対策官が誕生した。あだ名は「ネズミの帝王」で、同市の5つの行政区すべてにわたるネズミ駆除を担当し「新技術を使ったネズミの発見と全滅」などの対策を主導する。
また2022年には、ニューヨーク市のエリック・アダムス市長がネズミ対策に向けた4つの法案に署名。法案は「ネズミ駆除ゾーンの設定、ゴミの分別時間の明確化、建設現場やネズミが大量発生する建物のネズミ駆除を行うもの」だと強調した。
ニューヨーク市内にネズミが何匹いるかは不明だが、MMPCペストコントロール社の2023年半ばの調査によると、同市のネズミの生息数は約300万匹に増えているという。
ネズミを「避妊化」法案
法律制定や市のネズミ駆除対策官の任命のほかに、ネズミの数を減らすために不妊手術を行う取り組みも進行中だ。
ニューヨーク市議会議員のショーン・アブレウ氏は最近、ネズミを毒で殺すのではなく、避妊用の餌を与えて不妊化するという法案を提出した。
アブレウ氏は「我々がネズミを殺すことで解決する問題ではない。これは危機だ。ネズミの繁殖力はとても強いため、毒で解決することはできない」とFox 5 NYに語った。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。