17日にソロモン諸島で総選挙が行われる。今回の選挙では、好戦的で親中派の現職ソガバレ首相が続投するかどうかが注目される。しかし、国民には中国共産党傾斜と政治腐敗への鬱憤が募っている。
「ここ数年、何も改善されていない」と話すのは、首都ホニアラ近郊に住み、キャッサバなどを育てて市場で売ることで生計を立てているピーター・ベンジャミンさんだ。
ベンジャミンさんによると、首都から数キロしか離れていないのに、水を得るために小川まで歩かなければならず、適切な衛生設備もないという。 「新しい国会議員を望んでいる。コミュニティーに水道の掘削と適切なトイレを期待している」とベンジャミンさんは米ベナーニュースに語った。
反汚職団体トランスペアレンシー・インターナショナルのソロモン諸島支部長ルース・リロクラ氏は、ソロモン諸島をめぐる争いは、女性の政治参加の低さ、買票、一部地域での選挙権剥奪など、すでに課題を抱える同国の民主主義の助けにはならないと指摘する。
「これは超大国間の争いだ。われわれには関係ない。われわれは点数稼ぎに使われているだけだ」「彼らを見ていると、国民のことを忘れてしまったように見える。お互いに争うことに夢中で、お互いに競い合うことに夢中で、踏みにじっている国民のことを忘れてしまった」とリロクラ氏は語った。
中国共産党政府からはこれまで、ソロモン諸島に対してスポーツ施設や議員への資金提供などの支援を行なってきた。しかし、現地住民がその恩恵を受けることはなく、2021年には反中暴動が発生している。
中国共産党は数十年にわたり、太平洋島嶼国への影響力拡大を行ってきた。腐敗を活用して親中派政権を誕生させたソロモン諸島はその「成功例」とも揶揄される。台湾との断交、国際機関での支持票の獲得、米国に対する地政学的な優位性の確保を企図したものだ。
ハワイ大学太平洋島嶼国研究センターのヘンリー・ザジェフスキ研究員は、「国務省はソロモン諸島を中国が同地域に旗を立てることに成功し、米国にとって頭痛の種となっている場所だと見なしている」と指摘する。
ソロモン諸島は長年、外国からの援助に頼ってきたが、実質的な発展はなかった。汚職や民族対立に悩まされ、2003年にはオーストラリア軍が治安のために介入する事態となった。
中国共産党の影響工作は、オーストラリアからの依存脱却を意味する。ソガバレ政権下の2022年、ソロモン諸島は中国と安全保障協定を結び、中国の警察を受け入れ、米国、オーストラリア、ニュージーランドを驚かせた。
中国は2023年の太平洋競技大会の費用を大部分負担し、携帯電話基地局網の建設を進めているほか、道路建設も約束している。議員に対しても、以前は台湾が提供していたコミュニティ事業向けの資金を提供した。
粗悪な道路事情
野党議員のピーター・ケニロレア・ジュニア氏は選挙戦で、台湾との関係回復と中国との安全保障協定の見直しを公約に掲げている。選挙で選ばれた議会が首相を選出するため、ソガバレ首相の政治連合が善戦しても、首相の座をめぐる争いに直面する可能性がある。
ソロモン諸島は伝統的な民主主義国と比べて、政党に対する民衆の忠誠心はそれほど強固ではなく、結果を予測するのは困難だ。
ソロモン諸島の70万人の国民にとって、日々の関心事は太平洋地域で激化する米中の影響力争いではないようだ。ガダルカナル島の首都ホニアラなどでは、道路事情の悪さが最大の不満となっている。 地方では10代の少年が大きな穴を土で埋め、車を止めて通行料を要求している。いっぽう、議員は予算を得ることができるため、地元の有権者は財政的な支援を求める傾向にある。
運転手にとっては小さなストレスだが、中央政府の弱さを示す兆候だ。市販薬も手に入らない医療の貧困、主に中国人が経営する店での生活必需品(米など)の値上がり、若者の雇用不足なども不満の種だ。
何百もの離島からなるソロモン諸島での開票作業は通常1週間以上かかる。今回は国政選挙と州選挙が同日に行われるため、さらに長引く可能性がある。開票結果が出ても、50人の国会議員が首相を選出するまでには政治的駆け引きが行われるかもしれない。
オーストラリアのシンクタンク、ロウィー研究所の太平洋アナリストで元外交官のミハイ・ソラ氏は、ソガバレ首相は「巨額の選挙資金」を持って選挙に臨んでおり、有利な立場にあると指摘する。
一方で、ソガバレ政権下での暴力事件の発生、中央政府と州政府の対立激化、中国との安全保障協定がもたらした「国際社会の厳しい監視」は、同首相にとって不利に働くとソラ氏はベナーニュースに語った。
中国共産党は「援助戦」を繰り広げる。選挙の1週間前、中国の太平洋地域特使の銭波氏ら中国の高官が最大の島マライタを訪問し、水タンクや太陽光充電式のライトなどの支援物資を届けるとともに、マライタ州と中国の江蘇省との協力協定に調印した。
昨年、北京との関係を認めず中国のプロジェクトを拒否して失脚したマライタ州の元首相ダニエル・スイダニ氏は、選挙運動の集会で大勢の聴衆を集めている。 また、数百人のオーストラリアの警察官や兵士が選挙期間中の警備と兵站を担当しており、ニュージーランド、フィジー、パプアニューギニアの部隊も関与している。
注目を集めるスイダニ氏は、2019年に中国との外交関係樹立に反対し、台湾との関係維持を主張したことから、マライタ州知事の職を解任された。
スイダニ氏はエポックタイムズのインタビューに対し「ソロモン諸島の主権と独立性を守るために戦っている」と語り、中国共産党の影響力拡大に警鐘を鳴らしていた。また、その援助は「ソロモン諸島の政治家を買収するための手段だ」と指摘し、「一党独裁の中国共産党の下では、言論の自由や人権は保障されない」と訴えていた。
スイダニ氏の見解は、現在のソロモン諸島が直面している状況を数年前から予見していたと言える。
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