「臓器狩り阻止に報奨金制度を」米超党派議員、国務長官に書簡で訴え

2024/05/09 更新: 2024/05/19

米議会の超党派議員は3日、ブリンケン国務長官宛てに書簡を送り、中国共産党による臓器狩りの阻止に向けた取り組みの強化を求めた。法輪功学習者や少数民族を標的とした10億ドル(約1555億円)規模の強制的な臓器摘出に歯止めをかけるため、国務省の報奨制度を活用するよう訴えている。

国務省は現在、国境を越えた重大な犯罪組織のメンバーの逮捕・有罪判決につながる情報提供に対し、最大2500万ドル(約38億8018万円)の報奨金を出す2つのプログラムを運営している。1つは米国の麻薬取締法違反者を対象とし、もう1つは人身売買、野生動物の密輸、サイバー犯罪、マネーロンダリング、武器その他の不正な物品の密輸など、米国の国益を脅かす犯罪を対象としている。

中国問題に関する米国連邦議会・行政府委員会(CECC)の超党派議員6人は書簡の中で、「国務省が中国での野生動物や麻薬の密輸に関する情報提供に報奨金を出す取り組みを強く支持する」としつつ、「世界的な臓器移植のニーズと中国での違法な臓器売買の証拠に鑑みれば、この(強制的な臓器摘出)行為を目撃したり関与したりした人々から直接情報を得ることが喫緊の課題だ」と指摘した。

この6人は、クリス・スミス委員長とマルコ・ルビオ上院議員、バージニア州選出のジェニファー・ウェクストン民主党下院議員、カリフォルニア州選出のミシェル・スティール共和党下院議員、アイオワ州選出のザック・ナン共和党下院議員、モンタナ州選出のライアン・ジンキ共和党下院議員。

国務省報道官はこの書簡についてコメントを控えたが、「中国が良心の囚人や法輪功学習者、ウイグル人など少数民族から、非自発的なドナーの臓器を摘出していることについて、研究者や活動家、団体らが憂慮すべき情報を継続的に収集している」と報道官は述べ、「これらの疑惑が裏付けられれば、人権の甚だしい侵害であり、非倫理的な医療行為だ」と非難した。

さらに報道官は「良心の囚人への非道な行為をやめ、人権の公約に沿って行動し、患者の最善の利益、インフォームドコンセント、人格の尊重など、関連するすべての医療倫理基準とベストプラクティスを完全に順守するよう」中国側に求めた。

臓器摘出が死亡原因

報道官が言及した研究には、共産主義犠牲者記念財団(VOC)の中国問題研究員マシュー・ロバートソン氏が2022年4月に「アメリカ移植ジャーナル」に発表した論文も含まれている。

この論文は、中国の臓器移植件数と自発的なドナー数の間に大きな乖離があることを指摘。一部の中国人外科医が、脳死判定が不十分な状態で、あるいは処刑直後の死刑囚から臓器を摘出している可能性が高いとした。国際的な基準では、脳死と判定された後でなければ臓器摘出は認められないが、中国ではこの「死体ドナー」ルールが軽視されていると、ロバートソン氏は述べている。

また、中国では年間1万件以上の臓器移植が行われているが、自発的なドナー登録数は年間わずか100件程度にとどまる。残りの臓器は死刑囚や良心の囚人から強制的に摘出された可能性が高いと指摘した。

今年4月、ロバートソン氏と臓器狩り問題の調査を続けるジャーナリストのイーサン・ガットマン氏が米議会公聴会に出席。ガットマン氏は「臓器狩りは、ナチスの強制収容所以来の組織的な残虐行為であり、国際社会は中国政府にその全容解明を強く求めるべきだ」と訴えた。

中国共産党政権は長年にわたり、移植臓器は死刑囚もしくは自発的なドナーからのものだと主張していたが、2005年には、当時衛生部副部長(厚生労働副大臣に相当)を務めていた黄潔夫・臓器移植発展基金会理事長が、臓器移植のほぼ95%が囚人からのものであると認めた。

日本の安全保障、外交、中国の浸透工作について執筆しています。共著書に『中国臓器移植の真実』(集広舎)。
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