台湾の立法委員(国会議員に相当)や民間団体が15日、「強制臓器摘出撲滅法案制定、台日連携およびグローバル連携」をテーマとした記者会見を台北市で開いた。中国国内では無実の囚人が臓器を強制的に摘出され、移植用臓器に利用されているといった問題が続いているとして、世界各国に規制への立法を呼びかけた。
記者会見には、1990年代に中国の軍病院で臓器強制摘出に関与した経験を持つ医師の鄭治氏が出席。鄭氏は1994年、瀋陽陸軍総病院での研修中の経験を語った。若い兵士の臓器を、軍高官に移植する手術に関わったという。
「向かいの軍医が『早く彼の眼球を一つ取れ』と命令した。ドナーの両目が私をじっと見つめ、まぶたが動いていた。本当に手が下せなかった」と、声を詰まらせながら証言した。
民進党の許智傑立法委員(議員に相当)、民衆党の陳昭姿立法委員らが出席し、臓器強制摘出防止法案の推進を継続する意向を表明した。
「前の会期で法案は第一読会を通過したが、任期切れのため今期で再提出した。(法案推進のため)署名活動も始めた」と許智傑委員は説明。与野党の共同支持を呼びかけ、法案通過を目指すとした。
主催者は「中華民国は人権を基盤とする国家であり、海外で虐待や臓器強制摘出の被害に遭った国民を保護する法制が必要」と主張。世界の潮流に乗り法的な壁を築くべきだと訴えた。
「地下に法輪功学習者や子供達が閉じ込められている」
鄭氏は会見で、中国国内の臓器収奪をめぐる人権問題を告白した。2005年、中国中央政治局常務委員の側近から「湖北省武漢の公安庁裏庭の地下に、ぎっしりと法輪功学習者や未成年の子供たちが閉じ込められている」と聞かされたという。
こうした囚われの身の人々が移植臓器用の“ドナー”として扱われていると考え、人命軽視のおぞましさを認識し、中国を離れることを決意。同年、カナダ政府に保護された。
鄭氏は17年間身分を隠して海外生活を送ったが、車の衝突事故や食べ物への毒物混入による暗殺未遂を経験したとも明らかにした。
今回の台湾訪問について「とてつもなく勇気が必要」だったとし、頼清徳総統の就任演説で述べた「中華民国と中華人民共和国は互いに隷属しない」という言葉に勇気づけられたとし、感謝の意を示した。
米下院では6月末、全会一致で法輪功保護法を可決。臓器強制摘出の関与者に制裁を科すことを盛り込んだ。台湾では2022年、超党派30人以上の議員が反臓器強制摘出法案に署名し提出。六大直轄市と基隆市の議会も立法支持の提案を可決している。
許智傑委員は会見で、「世界中がこの(臓器収奪制止への)方向に向かっている。台湾も世界と共に立ち、この悪行に反対する」と述べた。陳昭姿委員も「政府は早く立法して、世界と協力してこの残酷で非人道的な行為を根絶すべきだ」と訴えた。
会見に出席した、臓器収奪制止を働きかける日本の有志団体「SMGネットワーク」代表の丸山治章逗子市議会議員は、「今回の共同記者会見が、我が国や各国の生体臓器収奪を制止するための法律の制定につながり、自国民が知らないうちに臓器収奪という残虐な犯罪に巻き込まれることのないよう望む」と語った。
日米議員も支持のメッセージ
米国と日本の多くの国会議員がビデオメッセージを通じて発言し、台湾の立法を支持した。米国下院は6月末に全会一致で法輪功保護法を可決した。
日本の参議院議員、片山さつき元内閣府特命担当大臣は「イスタンブール宣言と生体臓器収奪の阻止と撲滅に関する世界宣言を踏まえ、我々日本も強制臓器摘出禁止法案の前進に向けて努力します」と語った。
衆議院議員の櫻田義孝氏は、各国が協調して「臓器強制摘出撲滅および防止に関する世界宣言」の主旨に沿って積極的に立法すべきだと述べた。
米国法輪功保護法の主要提案者であるスコット・ペリー下院議員は「皆さんの努力に拍手を送ります! 私は皆さんと共にあり、いつでも今後の立法行動を支援し、成功に導く準備ができています」とビデオメッセージを送った。
会見では、全国弁護士連合会や医師会全国連合会の代表も出席し、支持を表明。臓器強制摘出という非人道的行為に対し、法制化を通じて国際社会と連携し対応していく姿勢を示した。
臓器狩り問題でデータ収集を続ける、法輪功迫害追跡国際組織(WOIPFG)主席の汪志遠医師は「中国共産党による法輪功学習者からの臓器強制摘出は、人類の道徳を破壊し、人類を滅ぼす犯罪だ。国家全体の資源を動員した、国家による集団殺りくだ。これは(人類の歴史上)前例のないことだ。世界を地獄に変え、そのため、その環境に生きるすべての人が危険にさらされている」と述べた。
7月末、30か国による対中政策に関する列国議会連盟(IPAC)が台湾で大会を開催する予定。この記者会見では、IPACに対しても臓器強制摘出犯罪に注目し、各国で刑事立法を推進するよう呼びかけた。
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