臓器を待つ患者と「奪われる命」 移植医療の葛藤を問う『ヒューマン・ハーベスト』

2026/08/02 更新: 2026/08/02

中国における不透明な臓器移植ビジネスと「臓器収奪」の問題を追ったドキュメンタリー映画『ヒューマン・ハーベスト(Human Harvest)』が8月1日、東京都狛江市の泉の森会館で上映された。

同作は、カナダの元国務大臣デービッド・キルガー氏と国際人権弁護士デービッド・マタス氏らによる長年の調査報告を基に制作され、2015年に米国の優れた放送作品に贈られるピーボディ賞を受賞した。

この作品が焦点を当てるのは、臓器移植を求めて世界各国から中国へ渡航する「移植ツーリズム」である。通常、移植可能な臓器が見つかるまでには長い待機期間を要する。しかし、中国では数日から数週間という異常な短期間で適合した臓器が見つかるるとされ、その臓器がどこから来るのかに関して不透明であり、国際的に問題視されている

『ヒューマン・ハーベスト』では、刑務所の囚人や法輪功学習者などの「良心の囚人」から、本人の同意を得ずに臓器が強制的に摘出されている事実について、元病院関係者や医師など実際に臓器を収奪した側の悔恨の言葉が聞かれ、また中国での移植手術で夫を亡くした妻の生々しい証言がきかれる。

「当時は夫が生き延びるために必死であり、ドナー(臓器提供者)がどのような人物で、どういった背景を持っているのかについて話し合う余裕がほとんどなかった」

「結果的に自分たちがこのような不透明な臓器移植に関わってしまったことに対して、数年経った今でも後悔して胸を痛めており、事実を多くの人に知ってもらうために証言を決意した」

上映後、看護師経験のある狛江市議会の大田久美子議員は、自身が看護師時代の経験に触れ、医療現場では臓器移植を待つ患者や家族が毎日涙を流しながら苦しんでいると語っている。家族が患者に「どんな手を使ってでも生きてほしい」と願い、藁にもすがる思いで海外へ向かう気持ちは痛いほど理解できると述べた。

一方で、その移植のために無実の人が生きたまま臓器を奪われているのであれば「同じ人間として絶対に許されない」と述べ、人々にこうした実態を知ってもらい、患者を救うための医療が別の命を犠牲にする構図を生まない制度を整える必要性を訴えた。

上映後、主催者と観客との質疑応答の時間がもうけられ、その中では日本人が海外移植に向かう背景には、国内の臓器提供者が少ないことや、関連する法整備の遅れがあるとの指摘も出た。

主催者側は、臓器提供は本来、人同士の助け合いや愛に基づくべきであり、金銭目的の売買や無実の人からの強制的な摘出は認められないと述べ、事情を知らない日本人が犯罪に巻き込まれたり、結果として加担したりすることを防ぐため、問題を広く知らせる必要があると訴えた。

海外では、不透明な移植を防ぐため、海外で移植を受けた患者への報告義務や、違法な移植に関与した医師への処罰、関係者の入国制限などの法整備が進んでいる。

また米国では中共の臓器収奪に関与または協力した個人や団体への制裁を目的とし、米国政府に対し中共の臓器移植システムの実態調査を求める「法輪功および臓器強収奪被害者の保護法案」が下院で全会一致で可決している。実現されれば、中共の臓器収奪に直接関与、または支援したことが判明している個人や団体には、米国内資産の凍結、入国禁止、ビザの取り消しなどの具体的な制裁が科される法案となっている。

一方、日本では臓器売買に対する罰則が100万円程度の罰金にとどまり、質疑応答の中では対応が国際的に見て遅れているとの意見が示された。

中国の臓器移植は「生きたい」という人間の自然な心につけ込み、罪のない人間を犯罪に巻き込んでしまう。海外移植を規制するだけでは問題は解決しない。患者が国内で必要な治療を受けられる体制を整え、海外で受けた移植の透明性を確保し、違法な臓器移植への関与を防ぐ法制度が求められている。

泉の森会館では8月2日の10時から16時まで、中国の臓器収奪をテーマにしたポスター展が開催されている。展示作品はいずれもコンクールで選ばれた作品で現代的な感覚でこの重いテーマを直感的に表現している。立ち寄れば、この中国の臓器収奪問題について詳しいスタッフの説明もあり、中国の臓器移植の実態がいかなるものか知る良い機会となるだろう。

 

泉の森会館:東京都狛江市元和泉1-8-12 小田急線狛江駅北口から3分

主催: 命のバトンを守る会

問い合わせ:090‐8173‐2311(佐藤)

大道修
社会からライフ記事まで幅広く扱っています。
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