将来のある若者にとって、中国社会の最大の不条理とは「いくら努力しても、全く報われない」という、人生への絶望感に他ならない。
競争社会を忌避した中国の若者が、あえて厳しい競争の中に入らず、立身出世や経済的な欲望には無関心な「寝そべり(タンピン)」という生き方によって、不条理な世相に反抗の姿勢を示していることが知られて、もはや久しい。
最近は「寝そべり」に加えて、「四不青年」というのもある。
「四不青年」とは、「家(マンション)は買わない。恋愛しない。結婚しない。子供はもたない」など、従来の中国人の価値観のなかで必須条件とされながらも、莫大な費用がかかる「人生の大事」を、あえてそぎ落とすというものだ。
そして、「寝そべり」や「四不青年」に続き、中国SNSでは今、「退廃文学」のブームが巻き起こっている。
以下にSNSで拡散されている「退廃語録」の一部を紹介する。
本来の言葉は「苦しみを味わいつくした人が人の上に立つ人間になれる」だ。しかし、退廃語録では「苦しみを味わいつくした人が人の上に立つ人間のために働く」となる。
このほか、「自分より優れている人はみな努力しているだから、自分も頑張るしかない」という人を激励するのによく聞かれる言葉は「自分より優れている人はみな努力している、それだと私が頑張ったところで何になるというのか」となる。
退廃語録はどこまでも自虐的で、読む者の努力心をそぎ落としていく。
「どうせ負けるのならば、スタートラインで負けた方がいい。そのほうが苦労して走ることもしなくていいのだから」
「船がすでに遠くへ行った。しかし、自分はその船に乗っていない」
「努力しても成功するとは限らない。しかし、努力しなければきっとラクだ」
「辛いことの後には必ずしもラクになれるとは限らない。だったら先にラクさせてくれ」
「若い時に享楽にふけていると、年老いた時気づく。今生もう遺憾がないーー」
このような「退廃文学」は多く共感を呼び猛烈に拡散され、語録を読んだユーザーのなかには、「人生を振り返ってみれば、退廃語録は真理を言っている」と嘆く人も少なくない。
「退廃文学のブーム」について、中国問題専門家で、エポックタイムズのコラムニストでもある王赫氏は、次のように分析する。
「いまの中国で起業すれば自殺行為と同じ。若者は仕事は見つからない、かといって起業することもできない。こうなったら寝そべって退廃に耽る以外、何をすればいいというのか」
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