アメリカ連邦地裁のダニー・C・リーブス判事は17日、バイデン政権が新たに制定した「タイトルIX(教育改正法第9編)」の施行をケンタッキー州など6州で、一時的に停止する命令を出した。この新規則は、「性別」の定義を「性自認」を含めるように変更し、女性を自認する男子学生が女子更衣室やトイレに入ることを許可することで、物議を醸している。
「タイトルIX」の差し止め命令
リーブス判事は、ケンタッキー州東部地区コビントン支部の地方裁判所に提出した覚書と意見書の冒頭で、「性別は男性と女性の二種類のみである」と明言した。
判事の命令により、タイトルIXの施行はケンタッキー州、インディアナ州、オハイオ州、テネシー州、バージニア州、ウエストバージニア州の6州で一時停止された。さらに、少なくとも5つの他州でこの規則の施行が禁止されている。
教育省の法的権限を超えた行動
リーブス判事は、アメリカ教育省が新規則の策定において、法定権限を超えており、その行為が「恣意的かつ変則的」であると判断した。
教育省は4月19日に最終規則を発表し、数十年の歴史を持つ「タイトルIX」法(学校での性別差別を禁止する法律)を「性指向」や「性自認」にまで拡大した。この動きが、多くの議論と一連の訴訟を引き起こした。
この新規則は、2024年8月1日から施行される予定だ。性自認が女性の男性に対し、女性の更衣室やトイレの利用、女性専用の団体への参加権利を与える内容となっている。また、「ハラスメント」の定義を拡大し、個人の性別認識に一致する代名詞の使用を義務付ける。新規則に従わない学校は、必要な連邦資金を失う可能性があり、訴訟の対象となる可能性もある。
リーブス判事は、「新規則は、学生や教師の安全に対する懸念に適切に対処しておらず、拡大された「タイトルIX」が言論の自由に重大な影響を及ぼす」と指摘している。
さらに、「この規則には、セクハラの新たな定義が含まれている。教育者は生徒の生物学的性別ではなく、生徒の主張する性自認に一致する代名詞を使用する必要があるかもしれない。日常生活における代名詞の使用が広範にわたるため、教育者は自らの宗教的または道徳的信念に反する場合であっても、生徒が望む代名詞を使うことが要求されることになるだろう」と述べている。
同判事は「言論を強制し、このような視点の差別につながる規則は許されない」と表明した。
政府の反応と法的展開
アメリカ教育省の広報担当者は大紀元に宛てた電子メールの声明で、リーブス判事の判決は再検討中だと述べた。
「タイトルIXは、連邦政府が資金を提供する教育環境において、性差別を受ける人がいないことを保証している。アメリカ教育省は、タイトルIXの法定保証を実現するために、厳格なプロセスを経て最終的なタイトルIX規則を作成した」
「アメリカ教育省は2024年4月に発表された『タイトルIX』最終規則を支持し、全ての生徒のために闘い続ける」としている。
州レベルでの法的対策
一方、ケンタッキー州のラッセル・コールマン司法長官は、リーブス氏の判決を評価している。
「判事の命令は、アメリカ教育省が『性別』の定義に『性自認』を含める試みは違法であり、その規制権限を超えていることを明確に示している」と述べた。
ケンタッキー州の案件は、少なくとも7つの訴訟の1つであり、20以上の共和党主導の州が「タイトルIX 」規則に反対している。
また、テキサス州の判事は、テキサス州での新規則の施行を阻止し、ルイジアナ州の判事は、ルイジアナ州、ミシシッピ州、モンタナ州、アイダホ州での施行を停止している。
バイデン大統領は2021年3月8日に大統領令を発令し、教育省にタイトルIXを改正して「性的指向や性自認に基づく差別」のない教育環境の保護を盛り込むよう正式に指示した。
教育省は4月に「タイトルIX」の改正を完了し、性別差別および性別に基づく嫌がらせの定義を拡大した。
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