中国の「一帯一路」プロジェクトは早くも陰りを見せ、多くの国でトラブルを抱えている。一方、日本政府や企業が主導する開発プロジェクトは引く手数多だ。大手日系メーカーの元幹部は取材に対し、中国のプロジェクトに対する日本側の優位性を語った。
「日本は絶対還元する。だから、ウィンウィンの関係になる。しかし中国はウィンウィンではない。中国しか得をしない。お金は全部中国の財布に入る」
匿名を条件に取材に応じた元幹部のA氏は、中国系プロジェクトの問題点をこう指摘した。例えば、タイのバンコクで進行中の都市鉄道プロジェクトでは、現地の交通事情や住民のニーズに配慮した計画が日系企業の主導で進められている。現地住民にメリットを感じてもらい、信頼感を構築している。
対する中国企業は現地のニーズや雇用を無視した開発を行い、住民の反感を買うこともしばしば。インド洋に面するケニアの港湾都市モンバサと首都ナイロビを結ぶ鉄道計画では、完成後にさまざまな問題が噴出し、住民から猛反発を受けた。
インド洋の島国スリランカは、「一帯一路」のインフラ計画を受け入れ、負債で財政が立ち行かなくなる「債務の罠」に陥っている。スリランカは中国からの輸入品に対する譲歩的な貿易信用スキームの提供や、中国人観光客のスリランカへの誘導支援を中国側に要求したものの、状況は一向に改善せず、大統領が辞任に追い込まれる結末になった。
「やはり中国のやり方では全然ダメ。なぜかと言えば、中国式のシステムではお金が全て中国の懐に入るばかり。それだったら進出する意味がないではないか」とA氏。「中国が資本や機材、人員まで送り込んでしまうため、現地では雇用を産まない。その上、身動きできないようにお金で縛り、返済できなければ港湾施設を没収するような手口だ。やはり現地に還元しないといけない」
技術力の差も超えられない壁だ。インドネシアのジャカルタ・バンドン間の高速鉄道プロジェクトでは、中国と日本が入札を争った。最終的に中国が受注したが、その後の建設過程で品質管理の問題が発生し、度重なる遅延や安全性の懸念が浮上した。いっぽう、日本が手がけた台湾高速鉄道は、開業以来高い信頼性と安全性を誇り、利用者から高い評価を得ている。
「日本の諺に『仏作って魂入れず』がある」とA氏は語る。「お金が多少あれば、工場や生産ラインを買うことはできる。しかしそれは形ばかりだ。職人の精神、すなわち魂が入らないといけない。中国共産党はこれが分かっていない」
日本企業のこうした「職人精神」は、環境への配慮や長期的なサポートにも現れている。
ミャンマーのヤンゴン市内の上下水道整備プロジェクトでは、日本政府と日本企業が一体となって長期的な支援を行い、現地のインフラ整備に大きく貢献している。ベトナムのノイバイ国際空港の建設では、日本のODA(政府開発援助)を活用した大成建設が、環境に優しい設計と高い施工技術で評価を受けた。
しかし、中国側のプロジェクトは環境破壊や地元住民への配慮が欠如しているものが多く、アフリカのタンザニアでのダム建設プロジェクトのように、環境保護団体の反発により計画見直しを迫られることも少なくない。
これについてA氏は、中国の共産主義的な経営方針に問題があると指摘、人を使い捨てにし、現地住民の福祉を考えないため、中国人に対するヘイトクライムの誘因になることもあると語った。
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