中国共産党の赤旗を大英博物館に持ち込み批判殺到

2024/07/09 更新: 2024/07/09

最近、中国のソーシャルメディアで広く共有されたビデオが多くの注目を集めた。

ある中国人ネットユーザーがイギリスの大英博物館を訪れた際、中国国旗を持っていたため、スタッフに制止され、国旗をしまわなければ退館させられると言われたという。このニュースは中国のメディアやソーシャルプラットフォームで急速に拡散し、多くの議論と怒りを引き起こした。

しかし、ラジオ・フリー・アジアによれば、実際の状況は異なる。ビデオでは、博物館スタッフが国旗をしまうよう求めただけであり、退館を求めたり、中国国旗を特別に問題視したわけではなかった。大英博物館の広報担当者も、ビデオに映る訪問者が退館を求められたわけではなく、国旗も没収されなかったと確認した。

ある中国人ネットユーザーが大英博物館を訪れた際、中国国旗を持っていたため、スタッフに制止され、国旗をしまわなければ退館させられると言われたという(スクリーンショット)

中共愛国主義プロパガンダ

これは、中共(中国共産党)が国内の愛国主義心理と小粉紅と呼ばれる”中国共産党を熱心に支持し、インターネット上で中国の国家主義的な立場を強く擁護する人々”を利用して大英博物館を攻撃する初めての例ではない。以前、ネットドラマ『大英博物館からの脱出(ESCAPE FROM THE BRITISH MUSEUM)』が中国で広く視聴され、その中で文化財・玉壺が若い女性に化身し、中国に帰ろうとするストーリーが描かれている。

このドラマは中共の官製メディアに絶賛され、「人民日報」やCCTVニュースなどが報道した。しかし、実際にはこの玉壺は文物ではなく、蘇州の玉彫刻家・兪挺氏が2011年に制作した現代美術品であり、2017年に大英博物館に収蔵されたものである。

また、これは小粉紅が英国で騒動を起こした初めての事例ではない。ロンドンのセント・パンクラス駅でピアニストのブレンダン・カバナーさんがライブ演奏中、中共の五星紅旗を掲げた小粉紅たちに「肖像権」を理由に撮影を中止するよう要求され、「中国の法律では許されない」と主張し、カバナーさんを人種差別主義者と非難する事件があった。カバナーさんは驚きながらも、「ここは共産主義の中国ではない!」と反論し、公の場での撮影は問題ないと主張した。この事件は各メディアで報道され、国際的な話題となった。

「くまのプーさん」のぬいぐるみを手にして、セント・パンクラス駅(英ロンドン)の公共ピアノの場所に戻った英国人ピアニスト、ブレンダン・カバナー氏。2024年1月26日撮影(SNSより)

カバナーさんはボイス・オブ・アメリカ(VOA)のインタビューで、「これはいわゆる国境を超えた抑圧だ。彼らはロンドンの駅で中国の法律を強制的に適用しようとしている。西洋で中国の法律を利用して他国の人々をいじめようとしている」と述べた。

「中国、中国人、または中国文化と中国共産党(中共)が同じものなのかどうか?」と尋ねられたとき、カバナーさんは「中共は中国の伝統文化を好まない。彼らはコントロール・フリークだ。法輪功の件を見ればわかる。中共は法輪功の座禅と功法も、中国の伝統文化も好まない。彼らは中国のカトリック教会さえも好まない。すでにバチカンと合意に達しているが、今、中共は愛国カトリック教会を作り、中共政府が司教を選ぶようにしようとしている。彼らはすべてをコントロールしたいのだ」と述べた。

なぜ小粉紅は西洋社会と頻繁に衝突するのか

小粉紅は90年代生まれが多く、基本的には大学生、大学院生、あるいは社会に出て間もない青年だ。彼らは中国の最も良い時代に生まれ、50~60年代生まれのような飢餓や欠乏を経験しておらず、また70~80年代生まれのような改革開放後の思想の衝撃や、1989年の天安門事件のような政治的洗礼も受けていない。

彼らの多くが裕福な家庭出身で、西洋の生活スタイルを享受しながらも共産主義の理念を宣伝するという二重基準と偽善に満ちた行動を取っていることを、カバナーさんは指摘している。彼らは金銭至上主義に従い、金さえあれば全てが解決すると信じている。

ドイツに留学中の博士の謝氏によれば、多くの中国本土からの留学生が積極的に中共の立場を擁護するのは、中共の教育体系で育てられた若い世代が文化教養の面で後退し、事実の判断に影響を受け、中共の宣伝を信じるようになっているためである。中共は民族主義情緒を利用して彼らを刺激し、熱狂的な反応を引き起こしている。

桜美林大学の菅沼雲龍教授は、小粉紅が中共や習近平を批判されると、自分が批判されていると感じるのは大きな誤解であると指摘した。

同氏は「私の授業でも小粉紅が教室で騒いだことがある。彼らは中共や習近平を批判されると、自分が批判されていると感じるのだ。しかし、これは大きな誤解である。例えば、バイデン氏やトランプ氏、岸田文雄氏を批判しても、それは政策や行動に対する批判であり、個人攻撃ではない。しかし、中共と習近平に対する批判は、中国全体への批判と捉えられがちである。これが愛国主義教育の結果であり、中国人が中共と中国を区別できない原因である。この洗脳は、真実を知り、西洋の社会を理解することで徐々に解消されるであろう」と述べている。

このような教育は一部の中国人に国際問題に対する極端な民族主義的立場を取らせ、西洋社会の普遍的価値観と深刻な対立を引き起こしている。中国人は「真実の中国」を認識する能力を徐々に失い、中共が推進する「中国の夢」がその代わりとなった。この変化により、中国人は民族の根幹を失い、中共からの歪んだ愛国主義と無尽の憎悪が生まれた。

北京で、一人の男性が「中国の夢」を宣伝する広告板の前を歩いている。背後にある中共の宣伝標語「中国夢」がひときわ目を引く。(Grey Baker/AFP via Getty Images)

米国飛天大学の教授・章天亮氏は、自身のYouTubeチャンネルで「中共は中国人を洗脳し、統治を維持している。中共は宣伝機関を通じて愛国主義と党への忠誠を混同させ、民族感情を煽り、外部世界に対する敵意を生み出している。その結果、中国と中共が一体化している」と述べている。

章天亮氏は、中共の実態を明らかにし、迷わされた中国人が真実を知ることが問題解決の鍵だと考えている。「中国には自己覚醒のプロセスが必要であり、自己覚醒と理性的思考を通じてのみ、中国は中共のプロパガンダの霧から抜け出し、中共の支配から解放され、世界と真の信頼と協力関係を築くことができる」

徐天睿
エポックタイムズ記者。日米中関係 、アジア情勢、中国政治に詳しい。大学では国際教養を専攻。中国古典文化と旅行が好き。世界の真実の姿を伝えます!
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