中国のEC大手「拼多多(へんたた、pinduoduo)」傘下の格安海外版EC「Temu」(テム、あるいはティームー)とその出店業者との間でトラブルが発生しており、Temuから離れる出店商も少なくない。
Temuは品質問題など、商品購入後の消費者の苦情に対応するために、極めて厳しい罰金ポリシーを制定しており、その「不合理」といわれる多額の罰金をめぐって、出店業者から強い怒りを買っている。
「我々への罰金で金儲けしているのではないか」と疑問を呈する出店業者も多く、憤りが広がるなか、数百の出店ショップ関係者は、先月22日と29日の2回にわたってTemuの本社(「拼多多」本社、広東省広州市)を包囲して、その「不合理な罰則ポリシー」に対する抗議を行っていたことがわかった。
関連トピックスは7月30日、中国SNSのウェイボー(微博)にトレンド入りした。
実態
Temuは「自社管理型」のモデルをとっており、出店業者はただ商品を供給すれば良い。販売価格の設定から発送、アフターサービスまですべてTemuが担当する。しかし、商品への苦情が寄せられた場合、従来ECサイトでは出店業者が直接購入者に対応を行うが、Temuの場合はTemuが直接出店業者を処罰するのだ。
Temuは今年3月以降、「アフターセールスの問題」などを理由に大量の罰金を科しており、あまりの多額な罰金のために「全く利益が出ない」という出店業者も少なくないという。
中国メディアが、多くの出店業者の訴えとして報じたところによると、「購入者から苦情や返金申請を受けた場合、出店業者はTemuから商品代金ももらえないばかりか、商品代金の5倍の罰金を科される」という。
深刻な損失を被っている出店業者は多いが、異議を申し立てる手段もなく、泣き寝入りするしかない現状がある。
抗議をするため、福建省からTemuの広州本社に駆けつけた出店業者の1人・鄭さんは中国メディアに対して、次のように訴えた。
「うちは装飾品を扱っていて、Temuでは4つの店を展開している。しかし、毎月のように罰金だけで数万元(数十万円)取られている。準備金などを凍結されたため、会社はキャッシュフロー不足に陥り、労働者の給料さえ支払えなくなっている」
出店業者の1人・陳忠さん(浙江省)はエポックタイムズの取材に対し、
「自分たちが7月29日に本部へ行って抗議を行った動画は、今や中国のネットで検閲されているし、この問題は今なお解決策がない」
と明かした。
陳さんはこの道十数年のベテラン業者で、Temuで店を構えた初期の業者でもある。
「靴を計20万足売ったが、これまで合計で30万元(約614万円)を超える罰金を取られている。そして、いまも毎月のように罰金を取られ続けている」「Temuに出店する5万の業者のうち、罰金を科されていない店はほとんどない」
「『不合格』、『欠陥』、『サイズが大き過ぎる』、『靴が足に合わない』、『包装が悪い』など、Temuの罰金理由の解釈権は、すべてTemu側にあり、個々の罰金ケースに関する詳しい説明もなしに、直接お金を差し引かれてしまう」と陳さんは話す。
このほか、Temuで衣料品店を3年間経営してきた穆雪(ぼくせつ)さんの場合、「罰金罰金で私は、心身ともに疲れ切っているわ、売れば売るほど罰金が増えていく」と深いため息をついた。
穆雪さんの店はこれまで40万元(約818万円)を超える罰金を科され、過去数か月で、罰金額が大幅に増えているという。
穆雪さんの店にTemuから告げられた「罰金理由」は、「サイズの問題」や「印象が違う」などとなっており、「商品購入後に返金申請をしてお金は返ってくるし、服もタダでもらえているという購入者は多い」と彼女は怒りを露わにした。
「問題を解決しようとして、Temuに連絡したいが、連絡がつかないのだ」と穆雪さんは困り果てている。
出店業者の甚大な損失とは反対に、Temuは大儲けしている。Temuの今年上半期の業績は5~6倍に急増し、1~3月の利益は約6213億円(約42億4千万ドル)に達しており、前年同期より202%も増加しているのだ。
その驚異的な利益のなかには、「出店業者に科した罰金が大量に含まれている」と出店ショップ関係者は口をそろえて言っている。
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