中共の技術発展を抑制
技術発展は、トランプ政権とバイデン政権において米中関係のもう一つの重要な戦場となっている。アメリカは、中国共産党(中共)が強制的な技術移転や企業間のスパイ活動などを通じて不公平な競争優位を得ており、アメリカの国家安全保障を脅かしていると主張している。トランプ政権もバイデン政権も、中共の技術と軍事発展を抑制するための措置を講じてきた。
バイデン政権 中国の半導体に対する輸出制限
バイデン政権は、中共の技術能力を抑制する点で、トランプ政権よりもさらに踏み込んでいると言えるだろう。2022年10月、バイデン政権は中国向けに先進半導体、半導体製造装置、およびスーパーコンピュータ関連製品の輸出を全面的に制限した。
これらの輸出制限は、中共が次世代の先進兵器システムを生産するために必要な半導体製造装置や、高度な計半導体を開発・生産する能力を獲得するのを防ぐことを目的としている。
技術輸出の制限に加えて、バイデン政権は同盟国にも同様の措置を取るよう圧力をかけている。2023年1月、日本とオランダはアメリカとの合意のもと、中国向け半導体装置の輸出を制限することを発表した。
また、バイデン政権は事実上の禁輸リストに当たるエンティティーリストを拡大し続けている。2024年5月までに、さらに319社の中国企業を実体リストに追加した。
カマラ・ハリス副大統領はシリコンバレーとのつながりが強いが、彼女の政策綱領はまだ広く知られていない。しかし、多くの専門家は、ハリス副大統領がバイデン政権の対中政策および技術政策を継承する可能性が高いと見ている。
トランプ氏 大学での学術スパイ摘発
2018年、トランプ氏は国家安全保障戦略の一環として「中国イニシアティブ」を開始した。これは、アメリカで働く中国の学者や研究者を対象としたスパイ防止策である。「中国イニシアティブ」により、米司法省は、「アメリカの利益に反する技術移転に従事するよう勧誘された」学術スパイ、例えば大学や研究所、国防関連施設で活動する中国人研究者を捜査し、起訴することができるようになった。
しかし、この取り組みは市民権団体から、アジア系アメリカ人に対する人種的偏見や差別を助長すると批判を受けた。その結果、2022年にバイデン政権下の司法省は「中国イニシアティブ」を中止した。
トランプ氏は、このプログラムの中止に対し厳しく非難しており、大統領選で勝利した場合、中国のスパイ活動を抑制する努力をさらに拡大すると表明した。
反スパイ政策の提案に加え、トランプ氏は、エネルギー、科学技術、医療用品、電気通信といった重要なインフラに対する中国の所有権を制限し、中国企業に保有株の売却を強制する「過激な」新法を制定することを誓っている。
トランプ政権下では、中国の主要技術企業である中興通訊(ZTE)、中芯国際(SMIC)、およびファーウェイ技術(Huawei)を含む300社以上の中国企業をエンティティーリストに追加した。このリスト入りにより、アメリカ企業はこれらの企業に製品をほぼ販売できなくなった。
また、トランプ氏は、「アメリカの機密情報を中国が取得するのを防ぐため」にビザ制裁や渡航制限を実施する意向を示している。2020年5月、トランプ氏は中国人民解放軍に関連する大学とつながりを持つ中国人留学生に対するビザ発行を停止し、バイデン政権もこの決定を維持し、2023年に至るまで多くの中国人学生がビザを拒否されている。
地政学・外交関係
外交において、トランプ氏とバイデン氏は共に中共に対して強硬な姿勢を取っている。しかし、トランプ氏は一対一の外交を好み、バイデン氏は同盟国と協力して中共に対抗することを強調している。
トランプ氏 アメリカファースト
トランプ氏は南シナ海問題で中共に対して強硬な姿勢を取り、アメリカの海軍プレゼンスを増強することを主張してきた。2020年7月には、トランプ政権は南シナ海における中共のほぼすべての領土主張を拒否する方針を発表し、「いじめ行為」を非難した。
台湾問題においても、トランプ氏は中共が設けた「レッドライン」を破る勇気を示している。2016年には、トランプ氏は1979年以来初めて台湾総統と直接対話したアメリカ大統領または次期大統領候補となった。彼は、アメリカ海軍の台湾海峡での巡回を増やし、台湾への武器販売を推進したが、台湾にはアメリカの保護に対する費用を支払うべきだとも述べている。
トランプ氏は、7月にブルームバーグ・ビジネスウィークのインタビューで、「台湾は我々に防衛費を支払うべきだ」と述べ、「保険会社と何も変わらない」と言及している。また、台湾が半導体製造分野での主導的地位を占めていることにも不満を表明し、台湾が「我々のビジネスを奪っている」と主張している。
これは外交における「アメリカファースト」の思想を反映している。他の例として、トランプ氏はNATOの加盟国が十分な国防費を支出しない限り、NATOから撤退すると警告している。現在、加盟国32か国のうち約3分の1は、防衛費がGDPの2%以上という目標を達成していない。
バイデン政権 同盟国と連携して中共に対抗
バイデン氏とハリス氏は南シナ海と台湾問題で中共に挑む姿勢を見せている。
2022年5月、アメリカ国務省は台湾に関する説明書を更新し、「一つの中国」の立場認識と台湾独立を支持しないという内容を削除した。同月、東京での記者会見でバイデン氏は、軍事力を用いて台湾を防衛する意向を表明している。今年4月には、バイデン氏が台湾と一部のアジア太平洋諸国に80億ドルの軍事援助を提供する法案に署名した。6月にはタイム誌のインタビューで、バイデン氏は台湾防衛のために武力行使を排除しないと再確認している。ハリス氏もまた、アメリカが引き続き台湾に対する軍事援助を提供することを支持している。
19日に民主党が通過させた綱領には、バイデン大統領が台湾海峡の平和と安定を守ることに強くコミットしていることが明記されており、これはアメリカの「一つの中国」政策に従っているとしている。この政策は「台湾関係法」、三つの共同コミュニケ、そして「六つの保証」に基づいており、現状を一方的に変更しないことを確保している。
さらに、2023年9月、ハリス氏はアメリカ・東南アジア諸国連合(ASEAN)サミットに出席し、フィリピンのフェルディナンド・マルコス大統領と会談した。彼女は、南シナ海でのフィリピンの主権と管轄権をアメリカが守ると述べている。
バイデン氏は同盟国と連携して中共に対抗することを主張している。例えば、就任後すぐにオーストラリア、日本、インドと四か国会合を開催し、アジアの民主国家との同盟を再構築し、NATOを通じてヨーロッパの民主国家との同盟も再構築している。国務長官のブリンケン氏は、初の欧州訪問時にNATO本部で「アメリカはNATOに対する揺るぎない誓いを持っており、完全にコミットしている」と再確認した。
バイデン氏は、アメリカと中共の競争は単なる権力闘争ではなく、民主主義体制と専制体制の間のイデオロギー的な戦いであると考えている。
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