利便性の裏にリスク 大手銀行3行 紙の約束手形や小切手を来年度中に発行終了 

2024/09/18 更新: 2024/09/17

これまで企業の間の取引で現金の代わりに使用してきた紙の約束手形や小切手の新たな発行を、来年度中に三井住友、みずほ、三菱UFJの大手銀行3行が終了することになった。

2021年6月に政府が公表した「成長戦略実行計画」には、「5年後の約束手形利用の廃止、小切手の全面的な電子化」が盛り込まれた。これを受け「2026 年度末までに全国手形交換所における手形・小切手の交換枚数をゼロにする」ことを目標とし、今回大手銀行3行が発行を終了する。

三井住友銀行は既存顧客への新規の手形・小切手帳の発行の受付を2025年9月末で終了し、発行済みのものについては、2026年の9月末で決済手続きを終了。みずほ銀行は新規発行を2026年3月末で終了し、決済の手続きは2027年3月末までに終えるよう呼びかけるほか、三菱UFJ銀行は2026年3月までで新たな発行を終了する予定。

各行は従来の紙ベースの手形取引に代わり、債権取引がパソコンやFAXによる簡単な操作で行える電子決済などへの切り替えを働きかけている。

手形・小切手制度は、長い間、ビジネスの決済において中核的な役割を果たしていた。しかし紙の手形や小切手は紛失のリスクがあるほか、現金の受け取りに時間がかかるという欠点があり、近年、使用が減少している。全国の手形交換所の交換高は金額ベースで平成2年にピークを迎えた後、平成 29 年には、ピーク期の枚数に比して約8分の1未満にまで減少していた。

全国銀行協会が実施した調査によると、大企業は手形・小切手の取扱いを「やめたい」、中小企業は「やめたいがやめられない」、規模の小さい事業者ほど「やめたくない」という意向が多くなっている。

特に、小規模事業者の振り出しの小切手は「やめたくない」意向が、「やめたい」意向と「やめたいがやめられない」意向の合計を上回り、政府が進めている電子決済の流れは小規模事業者にとって歓迎されないものとなっている。

また電子化の動きにはリスクも存在する。

まずはセキュリティのリスクだ。データがオンラインでやり取りされるため、ハッキングやデータ漏えいなどの脅威にさらされる。企業情報の取り扱いに対するプライバシー問題も重要な課題だ。

また導入したシステムに障害が発生すると業務がストップする。社内で対処できない場合は、システムの提供メーカーに復旧を依頼する必要があり、長時間業務がストップする可能性もある。

近年、こうしたトラブルにより金融庁がこうした企業に対して業務改善命令を出すことが毎年のように続いており、対応に追われている。

大道修
社会からライフ記事まで幅広く扱っています。
関連特集: 社会