メキシコ、中国貿易への制限強化へー 米国と足並みを揃える動き

2024/10/21 更新: 2024/10/21

メキシコシティが米国とカナダとの貿易協定の見直しを控える中、中国が大きな焦点となっている。

北米3か国が2018年に北米自由貿易協定(NAFTA)を改訂し、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)と名称を変更した際、2026年に見直しを行うことが予定された。メキシコは、この協議で中国との貿易問題を重要な議題に据えたい意向を示している。

メキシコの新大統領クラウディア・シェインバウム氏は、副貿易大臣ルイス・ロセンド・グティエレス氏を通じて、メキシコが中国からの輸入に依存している現状と、自国のサプライチェーンを強化する必要があることを最優先課題とする方針を明確にした。

こうした発言は、米国が自身のニーズを表現する際の言葉と非常に似通っている。事実上、メキシコは米国やカナダと協力し、中国の北米市場へのアクセスを制限する準備ができていることを示したといえる。

シェインバウム氏の視点から見ると、メキシコが抱える中国問題には2つの側面がある。1つは、中国からの輸入量が増え、製品の高度化が進む中で、メキシコがますます中国に依存するようになっている点だ。

もう1つは、中国が自国製品を米国に輸出するための中継地としてメキシコを利用しているという見方が広がっている点である。これは、トランプ政権およびバイデン政権が中国製品に課した関税を回避するためとされている。

グティエレス氏は、メキシコが「アジアから米国への跳び板」だという見方を否定しているが、実際には国内に多くの中国企業が拠点を構えている。

昨年、米国におけるメキシコ製品の販売額は中国を上回ったものの、その多くの製品に中国の部品が使用されており、時には中国資本の工場で製造されていた。メキシコ政府は、これらの中国企業を米国企業の工場に置き換えたい意向を強く示しているが、現時点ではそうした変革は思うように進んでいない。

メキシコが中国製品の中継地として機能しているかどうかを問わず、同国の中国との貿易が大きく歪んでいることは否めない。2015年以降、メキシコの中国からの輸入は450億ドル(約6兆7158億円)相当に達し、一方で中国への輸出はわずか50億ドル増加したに過ぎない。

中国との貿易赤字は2015年の650億ドルから、今年初めには1100億ドルを超える規模にまで拡大している。中国製品はメキシコの輸入全体の5分の1を占め、そのうち約70%はメキシコ国内の50社が取り扱っているが、そのうち約半数が中国系企業だ。

これまでメキシコシティは、この問題について米国やカナダと正式な対話をほとんど行っていない。しかし、非公式には米国のビジネスコミュニティ、特に自動車、半導体、航空宇宙、電子機器の各業界に対し、メキシコ国内における中国系企業の代替事業や、アジア(特に中国、マレーシア、ベトナム)からの輸入品の代替品を模索している。

シェインバウム氏とグティエレス氏は、このようにして中国から、貿易の多様化を図る米国企業をメキシコに誘致し、USMCAにおけるメキシコの地位を強固にし、現在の中国依存から脱却することを狙っているのだろう。

2026年のUSMCA見直しを控え、メキシコが今後より正式に米国やカナダに接触するのは確実といえる。米国やカナダが中国貿易に対し関税や規制措置を講じるなど敵対的な態度を示していることを踏まえれば、メキシコはこれらの努力において、両国の支持を得られる可能性が高い。

最終的な協議の詳細はどうであれ、中国が不利な立場に追い込まれることは避けられないだろう。

ミルトン・エズラティは、The National Interestの寄稿編集者であり、ニューヨーク州立大学バッファロー校の人間資本研究センターの関連組織であり、ニューヨークに拠点を置くコミュニケーション会社Vestedの主席エコノミストである。Vestedに加わる前は、Lord、Abbett & Coの主席マーケットストラテジスト兼エコノミストを務めていた。彼は頻繁にCity Journalに寄稿し、Forbesのブログに定期的に投稿している。最新の著書は「Thirty Tomorrows: The Next Three Decades of Globalization, Demographics, and How We Will Live」。
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