2016年に家族と共に韓国に亡命した元北朝鮮駐英公使のテ・ヨンホ氏は、ロシアのウクライナ侵攻を支援するために派遣された北朝鮮の兵士に対し、「脱北の好機」として、逃げることを強く呼びかけた。
テ・ヨンホ氏は10月28日、ワシントンでラジオ・フリー・アジア(RFA)のインタビューに応じ、北朝鮮の兵士派遣について、「多くの情報機関が確認した後、ほとんど衝撃的だった」と述べた。「北朝鮮では兵士が他国のために戦うことはないと教育されてきた」と説明し、この決定が北朝鮮内部でも機密扱いされていることを指摘する。
テ・ヨンホ氏は2020年に韓国の国会議員に当選し、今年7月には尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領によって次官級の「民主平和統一諮問会議」事務処長に任命された。脱北者としては最高位の職務に就いている。
派遣の三つの目的
テ・ヨンホ氏は、金正恩(キム・ジョンウン)北朝鮮労働党総書記が兵士を派遣する目的として、以下の3点を挙げる。
外貨獲得: 核・ミサイル開発や最近の洪水被害によって経済が困窮しているため。
ロシアの新技術獲得: 特に軍事衛星の開発において進展が見られないため。
国際舞台での存在感アピール: 世界情勢を変える国としての地位を確立することを目指すため。
テ・ヨンホ氏は「今後数週間から数か月が北朝鮮の将来、そして世界の安全保障にとって極めて重要になる」と強調する。
韓国の安全保障への影響
韓国の安全保障への影響について、テ・ヨンホ氏は北朝鮮兵士の派遣が韓国の安全保障に与える影響として、次の2点を指摘する。まず、北朝鮮製の火器や銃器の実戦テストが可能になり、欠点の発見と改良につながること。次に、北朝鮮軍が実際の戦場で、経験を積むことができるという点である。
「捨て駒」としての兵士
テ・ヨンホ氏は、韓国の金龍顯(キム・ドンヒョン)国防相が北朝鮮兵士を「捨て駒」と表現したことに同意し、「犠牲が大きければ、人々は、彼らが金正恩の利益のために犠牲になったことを記憶するだろう」と懸念を示す。
RFAの記者によると、北朝鮮の公式メディア『労働新聞』ですら、金正恩氏がロシアに兵士を派遣したことについては一切触れていないそうだ。これに対し、テ・ヨンホ氏は「派遣された兵士の両親でさえ、自分の息子がロシアに送られたことを知らないのではないか」と述べる。
また、韓国の国家情報院は、北朝鮮が派遣された兵士の家族を集団隔離し、情報漏洩を防ぐための措置を講じていると報じた。
脱北の呼びかけ
テ・ヨンホ氏は派遣された兵士に対し、「これは稀有な亡命の機会だ。ぜひ韓国への逃亡を強く勧める。自由と人権を享受してほしい」と呼びかける。さらに「若い北朝鮮の兵士たちには、金正恩のために命を犠牲にする必要はない」とも付け加えた。
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